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【事案の概要】 千葉県内で生活保護を受給していた原告ら(12名)が、厚生労働大臣による平成25年から平成27年にかけての生活扶助基準の引下げ改定(本件改定)に伴い、各処分行政庁から生活扶助費を減額する保護変更決定を受けたことに対し、当該変更決定の取消しを求めた事案である。本件改定は、社会保障審議会の生活保護基準部会による検証(平成25年検証)の結果を踏まえた「ゆがみ調整」と、デフレ傾向を理由として物価の動向を勘案した「デフレ調整」を一体的に行うものであった。デフレ調整は、厚生労働大臣が独自に設定した生活扶助相当CPIにより平成20年から平成23年までの物価変動率を−4.78%と算出し、基準額に0.9522を乗じて行われた。原告らは、本件改定が憲法25条、社会権規約9条、生活保護法3条・8条・56条に違反すると主張した。 【争点】 (1) 生活扶助基準の改定が違法となる場合(判断枠組み)、(2) 保護基準の引下げの可否、(3) 基準部会等の審議検討を経ていないことの適否、(4) ゆがみ調整の適否、(5) デフレ調整の適否、(6) 本件改定は不当な目的によるものか否か。 【判旨】 裁判所は、ゆがみ調整については、基準部会が年齢階級別・世帯人員別・級地別に生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態の乖離を検証したことに合理性が認められ、厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用はないと判断した。他方、デフレ調整については、基準部会の審議検討を経ずに行われた点を重視し、厚生労働大臣が用いた生活扶助相当CPIの問題点を詳細に指摘した。具体的には、生活扶助相当CPIのウエイトは一般世帯の消費構造に基づくものであり、生活保護受給世帯の消費構造を適切に反映していないこと、特にテレビ等の教養娯楽用耐久財の価格下落の寄与度が−3.28と物価変動率−4.78%の大部分を占めるところ、低所得世帯ではこれら品目の支出割合が小さく、−4.78%に相当する可処分所得の実質的増加が生じたとは認められないこと、さらにゆがみ調整に含まれる基準額水準の改定との整合性も図られていないことを認定した。以上から、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断には裁量権の逸脱・濫用があり違法であると認め、本件改定はゆがみ調整とデフレ調整を区分できない以上、全体として生活保護法3条・8条2項に違反し違法であるとして、原告らの請求を全部認容し、本件各変更決定の減額部分を取り消した。