市長に対する不信任決議の取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、A市長であった原告が、A市議会から受けた不信任議決の取消しを求めた行政訴訟である。原告は市有地に介護老人福祉施設を誘致する計画を進めていたが、A市議会は原告の「民主主義のルールを無視した強引な進め方」等を問題視し、令和4年6月16日、議員21名中20名の賛成により不信任議決を可決した。原告は自ら辞職せず議会を解散したが、改選後に初めて招集された議会において再度不信任議決(本件不信任議決)がなされ、地方自治法178条2項に基づき原告は失職した。失職に伴い市長選挙が行われ新市長が当選したが、公職選挙法所定の期間内に選挙又は当選の効力に関する異議申出はなされなかった。原告は、本件不信任議決は違法であるとして取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 第1の争点は、訴えの利益の有無である。被告は、既に新市長が当選し確定している以上、不信任議決を取り消しても原告の市長の地位は回復できないから訴えの利益を欠くと主張した。原告は、不信任議決が取り消されれば失職期間中の報酬請求権が認められるから訴えの利益はなお存すると主張した。第2の争点は、本件不信任議決の適法性である。原告は、議会が制定した「A市議会の議決すべき事件に関する条例」は地方自治法96条2項の要件を欠く無効な条例であり、議会はこの無効な条例を根拠に原告の適正な職務執行を阻止する目的で不信任議決をしたもので、裁量権の逸脱・濫用に当たると主張した。 【判旨】 東京地裁は、訴えの利益については、公職選挙法所定の期間内に異議申出がなされなかった以上、原告が市長の地位を回復することはできないとしつつも、不信任議決の取消判決を得ることにより失職から地位回復不能となるまでの間の報酬請求が可能となることから、訴えの利益はなお認められると判断した(最大判昭和40年4月28日参照)。しかし、本件不信任議決の適法性については、地方自治法178条3項の手続的要件以外に不信任議決の要件は法令上規定されておらず、不信任議決をすることができる場合に限定はないとし、同項所定の手続が履践されていれば適法であり、その理由の是非は最終的に選挙を通じて住民の判定に委ねられるべきものと判示した。本件不信任議決は同項所定の手続を履践してなされたことに争いはなく、また議決の理由も原告が条例に従わなかったことを主たる理由とするものではないことから、原告の主張はその前提を誤るものとして、請求を棄却した。