地位確認等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 世界最大規模の客船運行会社カーニバル社の日本子会社である被告会社に営業担当として勤務していた原告が、新型コロナウイルス感染症の影響を理由とする整理解雇の無効を主張し、被告会社に対して雇用契約上の地位確認及び解雇後の賃金の支払を求めるとともに、被告会社の代表取締役である被告Bに対して不法行為又は会社法429条1項に基づく損害賠償110万円の支払を求めた事案である。令和2年2月、カーニバル社が運航するダイヤモンド・プリンセス号で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、CDCによる米国内クルーズ船の運航停止命令が発出されたことで、被告会社は同年3月以降売上げが完全に途絶えた。カーニバル社自身も約80億ドルの損失を計上する深刻な経営危機に陥り、被告会社に対し人件費50%削減を指示した。被告会社は正社員67名のうち24名を対象に退職勧奨を行い、17名が合意退職に応じたが、原告を含む7名は退職に応じなかったため、同年6月30日付けで解雇された。原告は、雇用調整助成金の特例措置を活用すれば解雇を回避できたと主張した。 【争点】 主な争点は、①人員削減の必要性、②解雇回避努力の有無(特に雇用調整助成金の活用義務)、③被解雇者選定の合理性、④手続の相当性であった。原告は、コロナ禍において政府が雇用調整助成金の特例措置を拡充し解雇回避を呼びかけている状況下で、同助成金を申請すらせずに解雇したことは解雇回避努力を欠くと主張した。また、人員選定が被告B及び部門長の主観的・恣意的判断によるものであり、評価シートも訴訟のために事後的に作成された疑いがあると主張した。 【判旨】 裁判所は、整理解雇の4要素を総合考慮し、本件解雇は有効であると判断して原告の請求をいずれも棄却した。①人員削減の必要性について、被告会社は令和2年6月末時点で少なくとも1年程度は売上げを得られない蓋然性が極めて高く、運転資金をカーニバル社からの借入金に依存していたところ、カーニバル社自身が巨額の損失を計上し経費削減を迫られていたことから、人員削減の高度の必要性を認めた。②解雇回避努力について、販売費の大幅削減、大阪営業所の閉鎖、派遣社員の契約終了、役員・従業員の給与削減等の措置を評価した。雇用調整助成金については、退職勧奨前の時点では1日あたり8330円の上限では人件費50%削減と組織維持の両立が困難であったこと、6月12日改正後も運航再開の見通しが令和3年4月以降と予測される中で受給期間内に解雇回避を達成できる見通しがなかったことから、助成金を受給せずに解雇したことをもって解雇回避努力が不十分とはいえないとした。③人員選定について、カーニバル社から提供された評価指針に基づくポジションの必要性と従業員の能力評価による選定方法に不合理な点はなく、原告の低評価にも顧客対応上の問題等の根拠があると認めた。④手続の相当性について、退職勧奨時の条件提示や団体交渉での説明に虚偽はなく妥当であると判断した。