現住建造物等放火未遂、ストーカ行為等の規制等に関する法律違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、昭和60年頃から平成27年頃まで被害者Aと不倫関係にあり、Aの生活費を援助するなどしてきた。自身が離婚した令和2年9月ないし10月頃からAとの交際を再開させたが、身体表現性障害により体調に異変を覚える中、うまく言葉が発せられないことをAに嘲笑されたと感じたり、Aから性交渉を拒否されたりしたため、Aを叩いたり車を傷つけたりする嫌がらせをするようになった。 被告人は、令和4年2月24日に北海道警察本部長からストーカー規制法に基づく禁止命令を受けていたにもかかわらず、同年6月21日から29日にかけて、複数回にわたりA方敷地内や風除室に立ち入って押し掛け、窓ガラスを叩くなどのストーカー行為を行った(第1)。さらに、自身が住宅ローンを支払った家でAが生活していることが許せなくなり、同月29日午前8時55分頃、A方風除室において玄関扉東側壁面に灯油をまいた上、傘にライターで点火して放火したが、通り掛かった近隣住民が消火したため、壁面を焦がし窓ガラスを破損したにとどまり、目的を遂げなかった(第2・現住建造物放火未遂)。 【判旨(量刑)】 裁判所は、放火未遂について、住宅密集地での犯行であり、付近に可燃物の発泡スチロールが置かれ、既に窓ガラスが割れて外気が入る状態であったことから、家屋内への延焼や隣家への類焼の危険がある犯行であったと指摘した。被告人は二度にわたり灯油を購入し、一度は放火を試みて失敗した後もなお本件犯行に及び、放火後も火がついているか確認に戻るなど強固な犯意が認められ、非難は強いとした。自己の好意が満たされなかったことに端を発して相手方の家屋に火をつける行為はあまりに身勝手で悪質であり、同情の余地はないとした。 弁護人は身体表現性障害や認知機能の低下を酌むべきと主張したが、鑑定結果によればこれらは本件に直接影響せず、犯行当時の被告人は自分の考えに従って行動できていたとして退けた。一方、検察官の懲役7年の求刑については、被告人とAとの間に30年近くにわたる関係の経緯があり、交際再開後のAにも思わせぶりな言動があったことから、ストーカー行為の関係では被告人ばかりを非難できないとし、同種事案の量刑傾向に照らして求刑は重すぎるとした。 裁判所は、被告人の認知機能の低下や柔軟性の乏しいパーソナリティ傾向から、再びAに接触する懸念が強いとして、全部執行猶予とはせず、懲役3年(うち4月の執行を3年間猶予、保護観察付き)を言い渡した。未決勾留日数180日を算入した。