著作権等侵害による損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、テレビゲームの開発業務を行う個人事業者である原告が、ゲームソフト開発会社である被告トーセ及びゲームソフト販売会社である被告バンダイナムコエンターテインメントに対し、著作権侵害等を理由に損害賠償等を求めた事案である。 原告は、平成14年頃に契約社員として被告トーセに入社し、ゲームソフトの開発に関与していたが、平成21年5月に退職し、同年6月に被告トーセとの間で業務委託契約を締結した。同契約には、成果物の著作権が引渡し完了をもって被告トーセに移転する旨の条項及び著作者人格権の不行使条項が含まれていた。原告は同契約に基づき、本件ゲームソフトの戦闘アニメーション動画(本件各動画)の製作に携わったが、平成22年12月末頃に契約が合意により終了した。 その後、被告トーセが本件ソフト及びその派生ソフトを開発・製作し、被告バンダイナムコがこれらを販売した。原告は、(1)本件各動画は業務委託契約で定めた業務範囲外の追加業務として製作したものであるから、同契約の著作権移転条項は適用されず、被告らが本件各動画に係る頒布権を侵害した、(2)被告トーセが原告作成の仕様書等を無断で利用して不当に利得を得た、(3)被告トーセが本件ソフトのエンディングクレジットに原告の氏名を表示せず氏名表示権を侵害したと主張し、主位的に連帯損害賠償1500万円等を、予備的に不当利得返還を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)本件業務委託契約の著作権移転条項の効力が本件各動画に及ぶか、(2)原告から被告トーセへの成果物の引渡しがあったか、(3)原告が映画製作者である被告バンダイナムコに対し著作権法29条1項の参加約束をしたか、(4)著作者人格権の不行使合意の効力が本件各動画に及ぶか、(5)仕様書等の利用に係る不当利得の成否であった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 まず、業務委託契約の著作権移転条項について、同契約の「成果物」は、業務の完成・未完成を問わず、原告が同契約に基づいて発注を受けて製作したもの全てを意味すると解するのが合理的であるとした。また、原告が主張する「追加業務」に対して追加報酬を支払う旨の合意がされたことを認めるに足りる証拠はなく、仮にそのような合意があったとしても、それは業務委託契約の内容を具体化するものにすぎず、著作権移転条項の効力を排除する合意とはいえないと判断した。成果物の引渡しについても、原告がデータ共有サーバへのアップロード又はパソコン内にデータを格納して同パソコンを被告トーセに引き渡したことにより、引渡しがされたと認定した。 次に、著作権法29条1項の参加約束について、同条の参加約束は映画製作者に対して直接される必要はなく、映画の製作に参加しているとの認識の下で実際に製作に参加していれば黙示の参加約束が認められるとし、原告は被告バンダイナムコを製作者とする本件ソフトの製作に参加約束をしたと認定した。 著作者人格権についても、業務委託契約の不行使条項の効力が本件各動画に及ぶとして、原告の氏名表示権侵害の主張を退けた。仕様書等の不当利得返還請求についても、原告が被告トーセに本件成果物を引き渡したこと等を認めるに足りる証拠がないとして排斥した。