AI概要
【事案の概要】 旧優生保護法(昭和23年法律第156号)に基づき優生手術(不妊手術)を受けさせられた控訴人ら2名が、国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償(控訴人甲1につき3300万円、控訴人甲2につき3850万円)を求めた事案の控訴審である。控訴人らは、旧優生保護法の優生条項に基づき、本人の意思によらず生殖を不能にする手術を受けさせられ、子を産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)を侵害されたと主張した。当審では請求原因を変更し、主位的に、国会議員による旧優生保護法の立法行為・立法不作為、優生政策の推進、厚生大臣の優生手術阻止義務の懈怠、平成8年法改正以降の被害回復措置の不作為が一連一体の不法行為であると主張し、予備的に、厚生大臣らの被害回復措置義務違反及び国会議員の立法不作為の違法を主張した。原審(仙台地裁)は旧優生保護法の違憲性を認めつつも、除斥期間の経過等を理由に請求を棄却していた。 【争点】 主な争点は、(1)旧優生保護法の制定から平成8年法改正後に至るまでの国の行為が一連一体の不法行為として成立するか、(2)民法724条後段の20年の除斥期間の適用の可否(起算点、適用制限の可否、憲法17条違反の有無、拷問等禁止条約・国際慣習法違反の有無)、(3)平成8年法改正後の被害回復措置の不作為が不法行為を構成するかである。 【判旨】 仙台高裁は控訴を棄却した。まず、旧優生保護法の優生条項は、不良な子孫の出生防止を目的とし、合理的根拠なく差別的に取り扱うものであって憲法14条1項に反し無効であると判示した。厚生大臣が憲法尊重擁護義務に基づき優生手術を阻止すべきであったのに権限行使を怠った不作為は、国賠法1条1項の適用上違法であると認めた。しかし、除斥期間について、起算点は本件優生手術の時であり、本訴提起時には既に20年以上が経過していると認定した。控訴人らが主張した除斥期間の適用制限についても、控訴人らが優生手術の事実を認識し得ていたことから、権利行使が客観的におよそ不可能であったとまではいえないとし、正義・公平の理念のみに基づいて除斥期間の効果を排除することは困難であるとした。また、民法724条後段の適用は憲法17条に違反せず、拷問等禁止条約や国際慣習法にも違反しないと判断した。さらに、平成8年法改正以降の被害回復措置の不作為や国会議員の立法不作為についても、職務上の法的義務違反は認められないとして、控訴人らの請求をいずれも棄却した。