独占禁止法違反行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 再生品インクカートリッジを「エコリカ」ブランドで製造販売する原告が、インクジェットプリンターの大手メーカーである被告に対し、被告が平成29年9月以降販売するBCI-380及びBCI-381シリーズの純正品インクカートリッジ(本件純正品)において、ICチップに記録されるインク残量データを初期化できない仕様(初期化不能電子デバイス)を採用したことが、独占禁止法19条で禁止される不公正な取引方法(抱き合わせ販売等又は競争者に対する取引妨害)に該当すると主張し、同法24条に基づく差止請求及び民法709条に基づく損害賠償3000万円の支払を求めた事案である。従前の純正品では再生品事業者がインク残量データを初期化して再利用できたが、本件純正品では一度しか書換えできないメモリーが使用され、インクエンド情報の書込み後は物理的に書換え不能となった。これにより再生品はインク残量検知機能を無効にしなければ使用できず、インク残量表示・インクエンドサイン・インクエンドストップの各機能が利用できない状態となった。 【争点】 主な争点は、①独占禁止法24条に基づく作為請求の可否、②市場画定の要否、③抱き合わせ販売等(一般指定10項)該当性、④競争者に対する取引妨害(一般指定14項)該当性、⑤不法行為の成否、⑥損害額である。被告は、不公正な取引方法の判断には市場画定が必要であり、インクカートリッジの独立した市場は存在しないと主張した。また、再生品でもICチップを取り替えればインクエンドサイン等の機能を有する製品を販売可能であり、現に他社がそのような製品を発売していると反論した。 【判旨】 裁判所は、独占禁止法24条に基づく差止請求として作為を命じることも許容されると判断し、不公正な取引方法の判断に市場画定は必須ではないとしつつも、本件プリンター対応のインクカートリッジについて独立した競争の場を観念できるとした。しかし、抱き合わせ販売等の該当性については、被告製プリンター購入者の約84%が再生品より相当安価でも純正品を選んでおり、その理由はインクエンドサイン等の機能とは無関係であること、再生品を選択する約10%の者も価格の安さを主な理由としており、インクエンドサイン等は廉価な再生品にとって付随的機能にすぎず一般的に備わっているべきとはいえないこと、ノズルチェックパターンの印刷等で代替可能であることから、本件プリンター購入者が本件純正品の購入を余儀なくされているとはいえないとした。不当性についても、被告がサブスクリプションサービス等のためにインク残量データの偽造防止を図る意図もあったと認められ、競合品発売を妨げる意図とは断じ難いとして否定した。競争者に対する取引妨害についても同様の理由で否定し、不法行為の成立も認められないとして、原告の請求をいずれも棄却した。