邸宅侵入、現住建造物等放火、建造物侵入、窃盗、非現住建造物等放火、住居侵入、建造物損壊、器物損壊、建造物等以外放火被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、邸宅侵入、現住建造物等放火、建造物侵入、窃盗、非現住建造物等放火、住居侵入、建造物損壊、器物損壊、建造物等以外放火の各罪で起訴された。本件は、そのうち建造物等以外放火罪(刑法110条1項)に関する控訴審判決である。被告人は、深夜、簡易宿泊施設前路上において、西側門の木製門扉前に新聞紙を置き、灯油をかけた上でライターで点火して火を放ち、同門扉の一部等を焼損させた。原審(広島地方裁判所)は、そのまま放置すれば近接する建物等に延焼するおそれがある危険な状態が発生したとして、公共の危険の発生を認定した。これに対し、弁護人が事実誤認及び訴訟手続の法令違反を主張して控訴した。 【争点】 建造物等以外放火罪の成立要件である「公共の危険」の発生が認められるか否かが主たる争点であった。具体的には、①本件門扉の延焼により生じた高温ガスが軒を伝って仕切り板付近に到達し延焼する可能性、②仕切り板に直接火が燃え移り延焼する可能性、③隣接家屋の木製門塀に直接火が燃え移り延焼する可能性の各延焼可能性が争われた。また、原審が実施した燃焼実験の再現性(含水量、灯油量、散布方法等の条件の違い)や、原審が②③の延焼可能性を認定したことが釈明義務違反に当たるかも争点となった。 【判旨(量刑)】 広島高等裁判所は控訴を棄却した。公共の危険の発生について、本件犯行現場付近は木造家屋が立ち並ぶ住宅地域であり、簡易宿泊施設及び隣接家屋にも可燃性の木材で構築された構造物が多数存在し物理的に接着・接近していたこと、被告人が灯油を用いて放火し門扉の相当範囲が焼け落ち軒が焼損するに至ったことから、一般通常人をして近隣家屋への延焼のおそれがあると客観的に思わせるに十分な状態であったと判断した。燃焼実験の再現性に関する弁護人の主張についても、含水量や湿度の条件の違いが多少あっても再現実験として不適切とはいえず、灯油量の差異も門扉を燃やすきっかけにすぎないとする専門家証言は合理的であるとして退けた。訴訟手続の法令違反の主張についても、②③の延焼可能性は証人尋問で具体的に証言されており攻撃防御の対象が①に限局されていたとはいえないとして、釈明義務違反の余地はないと判断した。