再審請求棄却決定に対する異議申立事件
判決データ
- 事件番号
- 平成31け2
- 事件名
- 再審請求棄却決定に対する異議申立事件
- 裁判所
- 名古屋高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年6月7日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 田邊三保子、後藤眞知子、鵜飼祐充
AI概要
【事案の概要】 本件は、平成14年7月28日未明、愛知県豊川市のゲームセンター駐車場で駐車中の車内にいた被害児(当時1歳10か月)を略取し、同県宝飯郡の岸壁から海中に投げ落として殺害したとされる未成年者略取・殺人事件(いわゆる豊川事件)の再審請求棄却決定に対する異議申立事件である。請求人は逮捕後に自白したが、第一審では合理的疑いが残るとして無罪判決が言い渡された。しかし検察官控訴を受けた名古屋高裁が原判決を破棄し、懲役17年の有罪判決を言い渡し、上告棄却により確定した。確定判決は、請求人の車両の駐車状況・移動状況や、請求人の弁解が虚偽と認められることを重要な情況事実とし、自白の根幹部分の信用性を肯定して犯人性を認定した。請求人は平成28年に刑訴法435条6号に基づき再審を請求したが、名古屋高裁刑事第1部がこれを棄却したため、異議を申し立てた。 【争点】 主な争点は、弁護人が提出した各新証拠に刑訴法435条6号所定の明白性が認められるか否かである。具体的には、(1)海洋物理学者による遺体の逆漂流予測に基づき自白の投棄地点が事実に反するとする主張、(2)請求人の車両助手席から被害児に結びつく繊維等が検出されなかったことの意義に関する再現実験、(3)自白中の交差点信号に関する供述が客観的事実と齟齬すること(いわゆる「無知の暴露」)、(4)目撃者の車両識別供述の信用性、(5)犯行動機の不自然性、(6)幼児の溺水反応に関する医学的知見による自白の弾劾、(7)供述心理鑑定による自白の信用性評価、及び(8)原審の審理不尽の有無が争われた。 【判旨】 名古屋高裁刑事第2部は、異議申立てを棄却した。漂流予測については、実際の潮流観測で潮汐運動の乱れが確認されており、潮流予測データの信頼性に限界があるとして明白性を否定した。繊維鑑定については、事件から鑑識活動まで2か月余りの間に車両が使用・清掃されており、実際の状況と異なる条件での再現実験は意味がないとした。交差点信号の齟齬については、確定判決が信用性に問題ありとする犯行動機関連部分の供述であり、自白の基本的部分の信用性に影響しないとした。目撃供述、犯行動機、溺水反応に関する新証拠についても、いずれも確定判決の事実認定を揺るがすものではないと判断した。供述心理鑑定については、参考意見にとどまる上、請求人の車両が犯行時間帯に駐車場西側から北側に移動していたという重要な客観的事実を前提としていない点で証拠価値が乏しいとした。審理不尽の主張についても、事実取調べの実施は裁判所の合理的裁量に委ねられており、原審の手続に裁量逸脱はないとして排斥した。