AI概要
【事案の概要】 本件は、平成28年1月15日未明、長野県北佐久郡軽井沢町内の国道18号碓氷バイパスにおいて、北志賀方面へのスキーツアーを運行中の大型バスが、カーブが連続する急な下り勾配道路で加速し続け、カーブを曲がり切れずに路外崖下に転落し、乗客13名及び交替運転者1名が死亡、乗客26名が負傷した事故(いわゆる軽井沢スキーバス転落事故)について、バス運行会社の代表取締役である被告人A及び運行管理者である被告人Bが業務上過失致死傷罪に問われた事案である。被告人Bは、同社が大型バスの運転者として雇用した運転者D1について、約5年間大型バスの運転に従事しておらず運転技量が不十分であることを認識していたにもかかわらず、実技試験や運転訓練を実施せず、事後点呼等による運転状況の把握も行わないまま、D1を本件スキーツアーの運転業務に従事させた。被告人Aも、監督官庁の一般監査で複数の法令違反を指摘されていたにもかかわらず、被告人Bに対する指導監督を怠り、D1の運転技量を確認しないまま運行に従事させた。 【争点】 主な争点は、①被告人両名にD1の運転技量を把握・確認すべき注意義務違反があったか、②同注意義務違反と本件事故との因果関係である。特に①に関し、(a)本件バスが限界旋回速度を超えてカーブに進入した原因がD1の運転技量不足に基づくものか、(b)被告人両名の予見可能性の有無が争われた。弁護人側は、D1は大型免許を有しフットブレーキを踏めば防げた事故であり予見不可能であったこと、信頼の原則の適用等を主張して無罪を求めた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、走行実験やタコグラフの分析等から、D1がギア操作を誤りニュートラル状態に陥らせ、フットブレーキ操作も適切に行えなかったと認定し、これがD1の大型バスの運転技量不足に起因するものと判断した。その上で、被告人両名には運転者の技量を把握・確認して必要な訓練を実施すべき注意義務があり、これに違反したと認定した。量刑については、14名もの尊い命が奪われ26名が負傷した非常に重大で悲惨な結果であること、被告人両名が利益の確保を優先し輸送の安全確保を軽視し続けたこと、監督官庁の指摘後も虚偽の弁明書を提出するなど杜撰な運行管理を改めなかったことを重視した。一方、会社が被害者に総額22億円以上の損害賠償を行ったこと、被告人両名に前科がなかったこと等を考慮しつつも、監督過失であることを踏まえても実刑が相当とし、被告人Aを禁錮3年、被告人Bを禁錮4年に処した(求刑はいずれも禁錮5年)。