窃盗未遂被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、市役所職員及び金融機関職員になりすまし、高齢の被害者(当時76歳)からキャッシュカードをすり替えて窃取しようと企てた。令和3年3月5日、氏名不詳者らが滋賀県長浜市内の被害者方に電話をかけ、過払金還付のためキャッシュカードが古くて使えないようにする必要があるとうそを言い、被告人はトランプカード在中の封筒を携帯して被害者方付近路上まで赴いたが、被害者が不審に思い電話を切ったため、目的を遂げなかった。第1審は、被告人が被害者方付近で待機していた段階では窃取行為との時間的場所的近接性が認められず、窃盗の実行の着手がないとして無罪を言い渡した。これに対し検察官が控訴した。 【争点】 窃盗の実行の着手の有無、及び控訴審が第1審の無罪判決を破棄して事実の取調べをすることなく自判することが刑訴法400条ただし書に違反しないかが争点となった。 【判旨(量刑)】 最高裁第一小法廷は、上告を棄却した。弁護人の上告趣意のうち刑訴法400条ただし書に関する判例違反の主張は事案を異にする判例の引用であり、その余も実質は単なる法令違反の主張であって上告理由に当たらないとした。職権判断として、原審(控訴審)は、氏名不詳者らが被害者にうそを告げた行為について、犯行計画が目的とするキャッシュカードのすり替え行為との時間的場所的近接性が認められるとし、窃盗に密接した行為であり既遂に至る客観的な危険性があるとして窃盗未遂罪の成立を認め、第1審判決を破棄して懲役3年・執行猶予4年に処した。最高裁は、本件公訴事実記載の事実は第1審判決によって認定されており、原審が第1審の無罪判決を破棄したのは法令の解釈適用の誤りを是正したにとどまるから、事実の取調べをすることなく自ら有罪判決をしたことは刑訴法400条ただし書に違反しないと判示した。