商標権侵害行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「地力の素」という商標権(第5788047号、指定商品:土壌改良剤・肥料)を有する原告(肥料・土壌改良資材の製造販売会社)が、被告(肥料・土壌改良剤の製造販売会社)に対し、被告が有機肥料「プロボカシ」の包装に「地力の素」の標章を使用して販売する行為が商標権侵害に当たるとして、商標法36条に基づく差止め・廃棄、及び商標法38条1項1号に基づく損害賠償として約7160万円を請求した事案である。被告は遅くとも平成20年から「地力の素」の標章を使用しており、原告の商標出願(平成27年)より前から同標章を付した肥料を販売していた。 【争点】 (1) 被告各標章と本件商標の類似性、(2) 被告各標章の商標的使用の有無、(3) 損害額の算定、(4) 先使用権の成否、(5) 権利濫用の成否が争われた。特に被告は、「地力の素」は肥料の効能を示す記述的表示にすぎず商標的使用ではないこと、先使用による周知性の獲得、及び原告の権利行使が権利濫用であることを主張した。 【判旨】 裁判所は、本件商標と被告各標章はいずれも「地力の素」の文字列からなり、外観・称呼が類似し、「地力の素」は一般に使用される語として知られておらず一義的に内容が理解できるものでもないとして、類似性を肯定した。商標的使用についても、「地力の素」は特定の観念を直ちに理解させるものではなく、効能等の説明とは限らないとして、自他識別機能を有する標章として使用されていると認定した。先使用権については、特殊肥料市場の年間生産量が686万トン以上であるのに対し被告商品の販売規模は極めて小さく、広告も小規模であるとして、被告各標章が需要者の間に広く認識されていたとは認められないと判断した。権利濫用の主張も排斥した。損害額については、商標法38条1項1号の適用を認めつつ、原告各商品(土壌改良剤)と被告商品(肥料)の販売態様の違い、市場規模に対する両商品のシェアの低さ、被告商品に「プロボカシ」という独自の出所識別標章が付されていたこと等を考慮し、被告販売数量の90%について原告は販売できなかったと認定した。結論として、差止め・廃棄請求を認容し、損害賠償は約680万円(請求額の約9.5%)の限度で認容した。