危険運転過失致死被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和4年2月4日午後11時16分頃、大型貨物自動車を運転し、北海道樺戸郡内の信号機のある交差点を直進するに当たり、前車を追い越すため対向車線を約73km/hで走行中、対面信号機が赤色信号を表示しているのを停止線手前約88.6mの地点で認めた。直ちに制動措置を講じれば停止線手前で停止できたにもかかわらず、帰社を急ぐあまり追越しを完遂しようと考え、赤色信号を殊更に無視して約79km/hまで加速して交差点に進入した。その結果、左方道路から信号に従い交差点に進入してきた被害者(当時44歳)運転の軽自動車右側面部に自車前部を衝突させ、被害者車両を約61.3m先の歩道上まで弾き飛ばし、被害者を多発外傷により死亡させた。危険運転致死罪(自動車運転処罰法2条7号・赤色信号殊更無視)で起訴された。 【争点】 被告人が赤色信号を「殊更に無視」したか否かが争点となった。検察官は、被告人が停止線手前約88.6mの地点で赤色信号を認めており、その地点で直ちにブレーキを踏めば停止できたのに加速して進行したと主張した。これに対し弁護人は、被告人が赤色信号を認めたのは約28.7m手前の地点であり、殊更無視には当たらないと主張した。被告人は、事故直後の1回目の実況見分では約28.7m手前で赤色信号に気付いたと説明したが、ドライブレコーダーの確認後に行われた2回目の実況見分では約88.6m手前と指示し、その後の取調べでも2回目の指示内容に沿う供述をした。公判では再び約28.7m手前と供述を変遷させた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、約88.6m手前で赤色信号に気付いたと認定した。その理由として、被告人は約150.4m手前で黄色信号を認識しており、見通しの良い直線道路で約6秒間も赤色信号に気付かないのは不自然であること、ドライブレコーダー上ハンドル操作にぶれがなく左側ばかりを見ていたとは考えられないこと、プロの運転手が信号表示を認識しなかったとも考えられないことを指摘した。さらに、2回目の実況見分での指示地点が、ドライブレコーダーと信号表示の分析結果(黄色信号の約3秒後に赤色信号に変わった事実)と合致し、ドラレコの内容を告げられていない段階でこの地点を指示できたのは偶然や誘導ではないとして信用性を認めた。以上から赤色信号の殊更無視を認定した。量刑については、大型貨物自動車で交差点付近の無理な追越し中に赤色信号を認識しながら加速した運転態度の悪質性、本件当日だけで赤色信号の交差点に3回進入していたこと、被害者が信号に従い通過しようとした際に命を奪われた結果の重大性、遺族の甚大な被害を考慮し、検察官の求刑(懲役8年)を1年上回る懲役9年を言い渡した。