新安保法制違憲国賠訴訟控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人ら(原告ら)は、内閣が平成26年7月に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い、平成27年9月に平和安全法制関連2法(平和安全法制整備法及び国際平和支援法)を成立させたこと、さらに南スーダンへの自衛隊派遣に際し駆け付け警護の任務を付与したこと及び海自護衛艦に米海軍艦船の武器等防護を実施させたこと(本件各行為等)が、憲法前文、9条、13条、96条1項に違反して違憲であり、これにより平和的生存権、人格権及び憲法改正・決定権を侵害され精神的苦痛を被ったと主張して、国に対し国家賠償法1条1項に基づく慰謝料各10万円の支払を求めた事案である。原審は控訴人らの請求をいずれも棄却し、控訴人らが控訴を提起した。 【争点】 本件各行為等により、控訴人らの主張する平和的生存権、人格権(生命権・身体権・平穏生活権・主権者として蔑ろにされない権利)及び憲法改正・決定権が、国家賠償法上保護された権利又は法的利益として侵害されたといえるか。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断した。 平和的生存権については、憲法9条は国民の権利ないし法的利益を直接保障するものではなく、同条を根拠として平和的生存権が具体的権利性及び裁判規範性を有するとはいえないとした。憲法前文にいう「平和」は理念ないし目的としての抽象的概念であり、それ自体が具体的な法律上の争訟における判断基準となるものではないとした。また、憲法13条についても、控訴人らの主張する平和的生存権の内容、成立要件及び法的効果を具体的に確定するのは困難であるとした。 人格権については、本件各行為自体は控訴人らの生命・身体の安全や生活の平穏を侵害するものではなく、戦争に巻き込まれることへの不安や恐怖の念を抱いたとしても、損害賠償の対象となり得る法的利益の侵害があったとはいえないとした。控訴人らが防衛3文書の改定や米海軍艦船の防護実施等を挙げて戦争に巻き込まれる危険の増大を主張した点についても、具体的な権利侵害やその危険の発生を認めることは困難であるとした。なお、多数決原理に基づく代表民主制を採用する我が国において、国民各人の思想や信条と異なる立法等がされることは憲法の予定するところであるとした。 憲法改正・決定権については、憲法96条1項の趣旨に鑑み、憲法改正の発議は国会に委ねられており、国民各人に具体的な権利としての憲法改正・決定権が保障されているとは解されないとした。