国家賠償請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ2821
- 事件名
- 国家賠償請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年6月27日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 森英明、井出弘隆、森英明
- 原審裁判所
- さいたま地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 ペルー国籍の外国人Aが埼玉県熊谷市内で連続して敢行した強盗殺人等事件に関し、妻及び娘2人を殺害された控訴人(原告)が、被控訴人(埼玉県)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案の控訴審である。控訴人は、埼玉県警がAを不審人物として把握し、先行する強盗殺人事件(B事件)の犯人もAであるとの嫌疑を有していたにもかかわらず、適時に犯罪情報を地域住民に提供すべき義務を怠った結果、本件事件の発生を防ぐことができなかったと主張し、6443万4741円及び遅延損害金の支払を求めた。原審はこの請求を棄却し、控訴人が控訴した。 【争点】 主たる争点は、埼玉県警が地域住民に対し、Aに関する犯罪情報を提供すべき職務上の注意義務を負っていたか否かである。具体的には、①B事件発生後、Aが犯人である可能性やAによる同種凶悪犯罪が連続発生する危険性について、埼玉県警が認識し又は認識し得たか、②防災無線やパトカー巡回によるアナウンス等の方法で地域住民に情報提供・注意喚起をすべき法的義務があったか、が争われた。控訴人は、防犯対策情報は警察が独占しており(情報の非対称性)、安全確保措置の懈怠は規制権限の不行使とは異なるため違法性は緩やかに判断されるべきと主張した。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、客観的・事後的にみればB事件発生後の9月15日正午時点でAによる同種凶悪犯罪の危険性が切迫していたことを認めつつも、当時の捜査状況に照らし、埼玉県警がAをB事件の犯人であると認識し又は認識し得たとはいえないと判断した。その理由として、B事件現場の血文字の言語判別が不能であったこと、目撃情報も犯人を直ちに特定できるものではなかったこと、各侵入事件がいずれも軽微であり直ちに重大凶悪犯罪と結び付けることは困難であったことを指摘した。また、民家侵入型の犯行は周辺で連続発生する蓋然性の高い類型とはいえず、同種犯罪の連続発生を具体的に認識し得たともいえないとした。さらに、参考人段階にとどまる人物の情報を地域住民に提供することは、捜査の密行性や当該人物の人権、地域在住の外国人への影響等への配慮が必要であり、重大事件発生初期における情報提供の時期・程度は基本的に警察の裁量に委ねられるとした。埼玉県警は報道発表や学校への注意喚起要請等の措置を講じており、裁量権の逸脱・濫用は認められないとして、国賠法上の違法はないと結論付けた。