各損害賠償等、同反訴請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ1893
- 事件名
- 各損害賠償等、同反訴請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年6月28日
- 裁判官
- 土田昭彦、園部直子
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 部落解放同盟(1審原告解放同盟)及びその構成員ら約230名(個人原告ら)が、被差別部落の所在地情報(本件地域情報)を記載した書籍の出版やウェブサイトへの掲載等を行った1審被告A、1審被告示現舎及び1審被告Bに対し、人格権に基づく出版等の差止め・削除・公表禁止並びに損害賠償を求めた事案の控訴審である。1審被告らは、昭和11年に作成された非公開資料「全國部落調査」を基に、かつて被差別部落があったとされる地域の一覧表(本件地域一覧)をインターネット上に掲載し、書籍として出版することを企図した。また、解放同盟の役員等の氏名・住所・電話番号等の個人情報一覧(本件人物一覧)もウェブサイト上に掲載された。1審被告らは反訴として、仮処分申立てや本訴提起が違法であるとして損害賠償を求めた。原審は差止め及び損害賠償の一部を認容したが、示現舎及びBの損害賠償責任は否定していた。 【争点】 ①本件地域情報の公表による個人原告らの人格権侵害の有無、②1審被告らの損害賠償責任(示現舎・Bを含むか)、③差止めの必要性と範囲、④本件人物一覧の公表によるプライバシー侵害、⑤表現の自由・学問の自由との比較衡量、⑥1審被告らの反訴請求の当否。 【判旨】 控訴審は、原判決を一部変更し、1審被告示現舎及び1審被告Bの損害賠償責任も新たに認めた。まず、部落差別について、憲法13条・14条の趣旨に鑑み、不当な差別を受けることなく人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的利益は法的に保護された利益であると判示した。本件地域情報は、それのみで又は他の情報と相まって被差別部落出身等であることを推知させる情報であり、その公表は上記人格的利益を侵害するとした。法的救済を受けうる者の範囲については、①現に本件地域に住所又は本籍を有する者、②過去にこれらを有していた者、③親族が本件地域に住所又は本籍を現に有し又は過去に有していた者と認定した。差止めの範囲については、該当地域が属する都道府県の範囲での出版等の禁止を認めた。損害賠償責任については、1審被告Aと示現舎は一体として不法行為を行ったと認定し、1審被告Bも業務執行社員としての任務懈怠により会社法597条に基づく責任を負うとした。表現の自由・学問の自由との比較衡量については、調査研究自体は禁止されず匿名化によっても発表は可能であるとし、原告らの人格的利益が被告らの不利益を凌駕することは明らかであるとした。1審被告らの反訴請求はいずれも棄却した。