AI概要
【事案の概要】 本件は、「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」に関する特許(特許第4509578号)について、原告(株式会社東京精密)が請求項8及び11に係る発明の特許無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、レーザ光を加工対象物の内部に集光して改質領域を形成するレーザ加工装置に関するもので、切断予定ラインの一端部ではレンズを初期位置に固定して改質領域を形成し、その後にレンズと主面との間隔を調整しながら(オートフォーカス制御しながら)残部の改質領域を形成するという構成を特徴とする。 【争点】 本件発明が、先行技術である甲1発明(国際公開第02/22301号に記載のステルスダイシング技術)に周知の技術的事項(加工中のオートフォーカス制御及びウエハ端部での合焦動作の一時停止)を適用することにより、当業者が容易に発明できたものであるか否か(進歩性の有無)が争点となった。具体的には、(ア)甲1発明に加工中の集光点のオートフォーカス制御を適用する動機付けの有無、(イ)ウエハ端部で合焦動作を停止する構成の容易想到性、及び(ウ)これらの適用が多段階の改変に当たるか否かが問題となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。まず、甲1発明の認定について、審決が集光点の位置を「固定位置」と認定した点は正確ではないものの、甲1にはレーザ光照射中にZ軸方向の制御を行うことについての記載も示唆もないと認定した。次に、容易想到性について、甲1にはウエハの反りやステージ振動によるレーザ光の焦点ずれに関する記載がなく、甲1発明では改質領域の位置がある程度の幅をもった範囲に設定され得ることが示唆されていることから、当業者が甲1の記載から直ちにオートフォーカス制御の必要性を認識するとはいえないと判断した。また、周知の技術的事項1(ウエハ表面加工におけるオートフォーカス制御)は表面加工に関するものであり、加工対象物の内部に改質領域を形成するステルスダイシングにそのまま適用できるとはいえないとした。以上から、本件発明1及び2のいずれについても進歩性欠如の無効理由は認められないと結論づけた。