AI概要
【事案の概要】 原告(三菱ケミカル株式会社)は、「ゴルフクラブ用シャフト」に関する特許(特許第6798321号)を有していたところ、特許異議の申立てを受け、特許庁は請求項1、5及び7に係る特許を取り消す決定をした。原告は、この取消決定の取消しを求めて知的財産高等裁判所に訴えを提起した。本件特許は、ドライバー用ゴルフクラブ用シャフトについて、バイアス層とストレート層の弾性率、シャフトのトルク、各層の重量比等を特定の数値範囲に規定することで、飛距離の安定性と方向安定性に優れたシャフトを提供しようとするものであった。 【争点】 本件各発明に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件(特許法36条6項1号)を満たすか否かが争点となった。具体的には、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願日当時の技術常識に照らし、当業者が本件各発明の構成(構成1〜5:各層の弾性率範囲、トルクの数値範囲、バイアス層とストレート層の重量比、細径側バイアス層と全体バイアス層の重量比、細径側バイアス層と太径側バイアス層の重量比)により発明の課題を解決できると認識できるか否かが問題となった。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、本件各発明の課題は、ねじり剛性が高いゴルフクラブ用シャフトにおいてスイングの安定性が高く、プレーヤーの力量に左右されることなく飛距離の安定性と方向安定性の両方に優れたシャフトを提供することにあると認定した上で、構成2ないし5のいずれについても、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は各構成の数値範囲とすることによりなぜ課題が解決されるのかを適切に説明するものとはいえず、出願日当時の技術常識を考慮しても当業者が課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないと判断した。特に、構成2(トルクの数値範囲)については、明細書の記載や実施例1・比較例1の比較からは具体的な境界値で課題が解決される理由が理解できず、構成3〜5(各層の重量比)についても、重量比を特定の数値範囲としてもバイアス層の炭素繊維含有量は定まらないため、細径部のねじり剛性が課題解決に適した値となることを当業者が認識できるとはいえないとした。以上から、本件各発明に係る特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさないとして、特許庁の取消決定に誤りはないと結論づけた。