特許権侵害損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、接触操作型入力装置に関する特許権(リング状の軌跡上にタッチ位置検出センサーとプッシュスイッチ手段を一体化して配置する小型携帯装置の発明)を有していた原告が、被告(Apple Japan合同会社)に対し、被告製品であるiPod classicおよび第5世代iPod nanoのクリックホイールが本件特許に係る発明の技術的範囲に属すると主張して、不当利得返還請求権に基づき約9億6545万円の支払を求めた事案である。なお、本件特許権の存続期間は平成30年1月6日に満了しており、別件訴訟(対象期間:平成18年10月~平成25年3月)では既に約3億3664万円の損害賠償が確定していたため、本件はそれ以降の期間に係る損害を請求するものである。 【争点】 主な争点は、(1)被告各製品の構成要件充足性(被告各製品が静電容量センサーを使用していることから「タッチ位置検出センサー」に該当するか)、(2)本件各発明の無効理由の有無(乙8・乙9・乙10各公報を主引例とする進歩性欠如および明確性要件違反)、(3)特許法102条3項に基づく損害額である。 【判旨】 裁判所は、まず構成要件充足性について、構成要件Aは「タッチ位置検出センサー」が位置データを検出すると規定するにとどまり、接触圧力を検出する能力を有するものとは規定していないと判断した。本件明細書にも「静電誘導式検知手段(静電容量タイプ)」が明示されていることから、静電容量センサーも「タッチ位置検出センサー」に含まれるとして、被告各製品の構成要件充足性を認めた。 進歩性については、乙8・乙9・乙10いずれの公報を主引例とする場合も、先行技術のタッチパネルと周知技術1(センサー下プッシュスイッチ)とは機能が異なり、組合せの動機付けがないこと、さらに各先行発明の薄型化という課題に反しプッシュスイッチを追加すると厚みが増すという阻害要因があることから、進歩性欠如の主張をいずれも排斥した。明確性要件違反の主張も退けた。 損害額については、特許法102条3項に基づき、被告各製品の売上高を実施料算定の基礎とし、業界における実施料の相場(約3%)、本件各発明の技術的重要性、被告がクリックホイールを競合他社との差別化要素として宣伝していたこと、別件訴訟確定後も販売を継続した侵害態様等を考慮しつつ、原告が本件各発明を自ら実施していなかったこと等も踏まえ、実施料率を0.5%と認定した。その結果、実施料相当額約3989万円に弁護士費用約399万円を加えた合計約4388万円の支払を命じ(請求額約9億6545万円の約4.5%)、その余の請求を棄却した。