損害賠償請求事件(第1事件)、債務不存在確認請求事件(第2事件)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社ボスケシリコン)及び第2事件被告(株式会社KIT)は、シリコン製剤を用いた水素発生技術に関する特許権を有し、被告(株式会社マルカン、ペット用品の製造販売会社)との間で、知的財産実施許諾契約(甲1契約・ペット用)及び商品売買契約(乙3契約・乙4契約・人用サプリメント)を締結した。各契約には最低計画購入量が定められ、未達の場合に補償金を支払う条項(本件補償条項)が設けられていた。被告は甲1契約に基づきシリコン製剤を一部購入したものの、2年目以降は全く購入しなかった。原告は甲1契約の未達補償金1億7325万円の支払を求めて第1事件を提起した。これに対し被告は、錯誤及び事情変更の法理を主張するとともに、乙3契約・乙4契約に基づく未達補償金1920万円の債務不存在確認を求めて第2事件を提起した。 【争点】 1. 本件補償条項の合意について、被告に錯誤があったか(腸内pH値・本件物質の効能に関する錯誤、海外販売に関する錯誤) 2. 新型コロナウイルス感染拡大を理由とする事情変更の法理の適用により、被告が補償金の支払を免れるか 3. 乙3契約・乙4契約の補償条項についても同様の錯誤があったか 【判旨】 裁判所は、被告の錯誤の主張及び事情変更の法理の主張をいずれも排斥し、原告の請求を全部認容した。 まず、腸内pH値及び本件物質の効能に関する錯誤について、契約書上に腸内pH値や効能等は何ら明記されておらず、契約交渉過程で規範として形成されたともいえないとした。第2事件被告代表者はマウスによる動物実験の結果をベースに効果が「期待される」と説明したにとどまり、効能それ自体を保証したことはなく、被告自身もサンプルを動物に投与して独自の検証を実施した上で契約を締結している。仮に何らかの思い違いがあったとしても、それは専ら被告の希望的観測との齟齬にすぎず、要素の錯誤には当たらないと判断した。 海外販売に関する錯誤については、甲1契約の文言上、国内における通常実施権に関する契約であることが明記されており、被告の契約交渉担当者自身も国内の実施権に関する合意であると認識していたと供述している点を指摘し、被告自身も海外販売を前提としていたとは認められないとした。 事情変更の法理については、被告が対面営業を重視していた事実を認めるに足りる証拠がない上、コロナ禍に伴う巣ごもり需要により令和2年のペット関連商品市場は前年比103.3%と拡大しており、感染拡大によりペット用サプリメントの販売数が一律に減少したとは認められないとして、事情変更の法理の適用を否定した。 以上から、被告に対し未達補償金1億7325万円及び遅延損害金の支払を命じ、被告の債務不存在確認請求はいずれも棄却した。