AI概要
【事案の概要】 本件は、青森県下北郡に本店を置く水産仲卸会社の代表取締役である被告人が、漁業法に基づくくろまぐろの漁獲量報告義務に違反した事案である。 くろまぐろ(太平洋クロマグロ)は、国際的に資源の枯渇が深刻に懸念されており、日本では漁業法により特定水産資源に指定され、漁獲量の管理が厳格に行われている。具体的には、都道府県知事が管理する漁獲枠(TAC)制度の下、漁業者は採捕したくろまぐろの漁獲量を、陸揚げした日の属する月の翌月10日までに知事に報告する義務を負っている。この報告制度は、漁獲枠を適正に管理し、資源の持続的利用を確保するための根幹をなすものである。 被告人は、令和3年7月から同年9月頃にかけて、13名の漁船船長らとそれぞれ共謀し、各船長が知事管理区分において採捕・陸揚げしたくろまぐろについて、所定の期限までに漁獲量を青森県知事に報告しなかった。未報告の漁獲量は、30キログラム未満の小型魚と30キログラム以上の大型魚を合わせて合計42トンを超える大量のものであった。被告人は水産仲卸業者として、各漁業者からくろまぐろを仕入れる立場にあり、漁獲量を報告しないことで漁獲枠の超過を隠蔽し、漁業者が枠を超えて操業を継続できるよう協力していた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、まず本件の悪質性について、くろまぐろが絶滅の危機に瀕し世界的に漁獲管理が行われている中で、約2か月間に42トンを超える大量の漁獲量を未報告としたことの影響は軽視できないと指摘した。共犯者らは、漁獲量の一部を報告しないことで割当漁獲枠を超過して採捕し、利益を得ようとしたものであるが、その実行には被告人のような水産仲卸業者の協力が不可欠であり、被告人の果たした役割は大きいとした。被告人は、漁獲枠により苦しい状況に追い込まれた漁業者を助けたかったと動機を述べたが、裁判所は、被告人自身も本件犯行により実際に多額の利益を得ていたことを踏まえ、特段酌量すべき点は見出しがたいと判断した。 他方、被告人が事実を認めて反省の態度を示していること、古い交通罰金前科1犯以外に前科がないこと、妻が公判廷で被告人の監督を誓約していることなどの有利な事情も考慮し、被告人を求刑どおり懲役4月に処した上で、3年間の執行猶予を付した。