AI概要
【事案の概要】 令和元年7月21日施行の第25回参議院議員通常選挙に際し、広島県選挙区から立候補を予定していたAの選挙運動者であった被告人(現職県議会議員)が、Aに当選を得しめる目的をもって、Aへの投票及び投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、同年5月29日頃、Aの配偶者であるG(当時衆議院議員)から現金10万円の供与を受けたとして、公職選挙法違反(被買収)に問われた事案である。被告人は、同金員は政党支部からの例年どおりの寄附金であり、買収の趣旨の認識はなかったと主張して争った。 【争点】 主な争点は、①Gによる現金10万円の供与に、本件選挙におけるAへの投票取りまとめ等の選挙運動に対する報酬の趣旨(買収の趣旨)が含まれていたか、②被告人がそのことを認識していたか、の2点である。弁護人は、被告人とAの従前の関係性から金銭供与がなくても選挙支援は当然であり買収の動機がないこと、金額が例年の寄附金と同額であること、他の議員と比較して少額であること等を主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、以下の事情から買収の趣旨及び被告人の認識をいずれも認定した。まず、Gと被告人は、被告人が複数回当選を重ねた現職県議であり選挙運動の経験・実績を有すること、選挙情勢や相互の関係性から被告人が本件選挙でAの当選に向けた種々の支援をすることを期待し期待されていることを相互に認識していた。そして、Gは選挙公示日の約1か月前という時期に、被告人の仲立ちでAの当選に有利なJ会長との面会が実現しポスター掲示等を依頼した直後に、二人きりの車中で現金を渡しており、買収の趣旨への期待が強く顕在化した経緯・時期・場所での供与であった。弁護人の主張についても、①協力関係にある者に対し選挙に臨み関係を維持・強化するため金銭を供与する動機は十分あり得ること、②例年の寄附金として意味のある金額は買収金としても意味があること、③面会直後の供与は選挙運動への期待の顕在化として意味を左右することは明らかであるとして、いずれも排斥した。被告人の認識についても、一度受け取りを断った行動自体が買収の趣旨を認識しちゅうちょしたことの現れであり、Gの「いつものだ」との発言も受け取りやすくするためのものと認定し、被告人の弁解を信用できないとした。量刑については、国政選挙における買収金の受供与は議会制民主政治の根幹をなす選挙の公正さを直接害する悪質な行為であり、現職県議会議員でありながら安易に買収金を受容した意思決定は強い非難を免れないとして、求刑どおり罰金10万円及び10万円の追徴を言い渡した。