電磁的公正証書原本不実記録、同供用、公職選挙法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、高知県安芸郡奈半利町の町議会議員選挙に立候補する決意を有していた被告人が、自身の親族2名とそれぞれ共謀し、選挙人名簿に不正に登録させるための一連の犯行に及んだ事案である。具体的には、被告人は、親族2名について、実際には奈半利町に転入した事実がないにもかかわらず、虚偽の住民異動届を町役場に提出し、住民基本台帳ファイルに不実の記録をさせた上、これを公正証書の原本として供用させ、さらにその記録に基づき選挙人名簿に氏名等を登録させた(電磁的公正証書原本不実記録・同供用、詐偽登録)。加えて、親族2名は、この不正な手続により取得した不在者投票証明書や投票所入場券を用いて、同町議会議員選挙において実際に投票を行った(詐偽投票)。 【判旨(量刑)】 裁判所は、本件各犯行について以下のとおり評価した。住民基本台帳ファイルの信用を害し、選挙人資格のない者を選挙人名簿に登録させることで民主主義及び住民自治の根幹となる公正な選挙の前提を損なった点、また、投票権のない者に投票させて得票数を不正に増加させ選挙の公正を直接的に害した点で、いずれの犯行も悪質であるとした。特に、被告人は平成19年の初出馬以降、選挙の度に同様の不正行為を繰り返しており、また平成23年にはあっせん収賄罪により執行猶予付き懲役刑に処せられた前科があることから、町議会議員としての自覚や順法精神が欠けていると指摘した。被告人が犯行を終始主導し、その利益を専ら享受していたことから、共犯者らに比して責任は格段に重いとした。一方、議員辞職による社会的制裁を受けたこと、公訴事実を認めて反省の態度を示していること、妻が監督を誓約していること、前科がいずれも10年以上前であることなどの有利な事情も考慮し、懲役1年・執行猶予5年とした(求刑:懲役1年)。