国家賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 甲国国籍を有する外国人である控訴人は、退去強制令書の発付を受け、入国者収容所東日本入国管理センターに収容されていた。控訴人は、①東京出入国在留管理局(東京入管)職員による侮辱及び婚姻関係への不当干渉、②出入国在留管理庁が公開した資料による名誉毀損、③難民認定申請中の再収容の違法性、④東京入管難民審査参与員事務局が難民不認定処分の異議申立手続の進捗情報を執行部門に提供し、裁決通知と送還が同日になるよう調整して提訴の機会を奪ったこと、⑤成田空港支局施設内等における入国警備官による違法な有形力の行使を主張し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料合計450万円の支払を求めた事案の控訴審である。原審は④の一部のみ認め慰謝料3万円を認容したが、控訴人が敗訴部分を不服として控訴した。 【争点】 主な争点は、④異議申立棄却決定の告知遅延及び送還日程の調整行為の違法性と、⑤本件送還の際の入国警備官による有形力行使の違法性である。特に、入国警備官が控訴人の裁判を受ける権利を侵害する目的で送還の日程調整を行ったか否か、約11時間に及ぶ送還執行中の有形力行使(後ろ手に手錠された腕を背中から約90度まで繰り返し持ち上げる行為、膝の上に体重をかける行為等)が全体として違法となるかが争われた。また、難民異議申立手続の進捗情報の提供が行政機関個人情報保護法8条1項に違反するかも問題となった。 【判旨】 東京高裁は、原審判断を変更し、慰謝料50万円の支払を命じた。まず、入国審査官が控訴人から司法審査を受ける機会を奪う目的で異議申立棄却決定の告知を約1か月遅延させたこと、及び入国警備官が告知と送還が同日に連続的に行われるよう日程を調整したことは、いずれも控訴人の憲法32条に基づく裁判を受ける権利を侵害し違法であると判断した。原審が認めなかった入国警備官による日程調整の違法性を新たに認定した点が重要である。さらに、このような違法な目的で調整された本件送還の執行自体も違法であり、その間約11時間にわたる有形力の行使を含む一連の執行行為は全て違法であるとした。加えて、難民異議申立手続の進捗情報の提供は、裁判を受ける権利を侵害する目的での日程調整のためであったと認定し、行政機関個人情報保護法8条2項2号の「相当な理由」に当たらず同条1項に違反すると判断した。慰謝料については、遅延行為等につき5万円、送還執行に係る一連の行為につき45万円と算定した。他方、①侮辱行為、②名誉毀損、③再収容の違法性に関する控訴人の主張はいずれも退けた。