公職選挙法違反被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5う139
- 事件名
- 公職選挙法違反被告事件
- 裁判所
- 大阪高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年7月19日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 長井秀典、杉田友宏、野口卓志
- 原審裁判所
- 奈良地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 被告人は、衆議院議員総選挙の公示5日前に、自身の出身大学の校友名簿から抽出した約2441名(うち起訴対象は35名)の住所に宛てて、選挙はがき(投票依頼文言が印刷されたもの)の推薦人欄への署名・宛名書きを依頼する文書等を同封した封書を送付した。この行為が、公職選挙法が禁止する事前運動(同法129条違反)及び法定外選挙運動用文書の頒布(同法142条1項違反)に該当するとして起訴された。原審の奈良地方裁判所は有罪判決を言い渡し、被告人側が控訴した。 【争点】 主な争点は以下の4点である。第1に、本件封書の送付行為が選挙運動に該当するか、それとも選挙運動の準備行為又は政治活動にすぎないか。第2に、被告人に事前運動及び法定外文書頒布の故意があったか。第3に、選挙運動該当性の要件として「投票を得又は得させる目的」(得票目的)が必要か、被告人にその目的があったか。第4に、事前運動を一律に禁止する公職選挙法の規定が憲法21条に違反するか。 【判旨(量刑)】 大阪高裁は控訴を棄却した。選挙運動該当性について、裁判所は独自の判断基準を示した。すなわち、本件封書には投票依頼文言が印刷された選挙はがきが同封されており、内容を理解しようとすれば必然的に投票依頼文言が目に触れるから、直接的な投票依頼と実質的に同様の効果が期待できる行為であるとした。その上で、このような推薦依頼等が選挙運動の準備行為として許容されるか否かの判断基準は、相手方との間に「推薦依頼をすればこれに応じてくれると相当程度期待できるような人的関係」が築かれているか否かであるとした。本件では、名簿登載者は大学卒業生であること及び奈良県在住であること以外に共通点のない集団であり、被告人が同窓会活動等を通じて一部の卒業生と関係を築いていたとしても、約8000名の名簿登載者の集団全体との間にそのような人的関係が築かれていたとは認められないとして、本件行為は推薦依頼に名を借りた実質的な投票依頼行為であり、選挙運動に該当すると判断した。故意についても、弁護人が主張する事情はいずれも名簿登載者の集団全体との間に上記人的関係が築かれたと誤解するようなものではなく、被告人の期待は願望にすぎないとして、故意を認めた。憲法違反の主張についても、事前運動の一律禁止は選挙の公正を確保するための必要かつ合理的な制限であり、憲法21条に違反しないとして排斥した。