AI概要
【事案の概要】 被告(日本郵便株式会社)と有期労働契約を締結している時給制契約社員である原告が、被告が無期労働契約を締結している正社員に寒冷地手当を支給する一方で、原告にこれを支給しないことは労働契約法20条(平成30年法律第71号による改正前のもの)に違反すると主張し、不法行為に基づく損害賠償として、平成28年11月分から令和元年11月分までの寒冷地手当相当額11万2200円及び弁護士費用1万1220円等の支払を求めた事案である。原告は平成19年以来、盛岡市内のA郵便局で郵便外務事務(郵便物の配達等)に従事する時給制契約社員であり、寒冷地手当支給地域の4級地に勤務する世帯主であった。 【争点】 正社員に寒冷地手当を支給する一方で時給制契約社員にこれを支給しないことが、労働契約法20条にいう不合理な労働条件の相違に当たるか。原告は、寒冷地手当の趣旨は暖房用燃料費等の生計費補助であり、時給制契約社員にも同様に生計費が発生する以上、不支給は不合理であると主張した。また、地域別最低賃金では暖房用燃料費等の生計費増加分の考慮が不十分であるとも主張した。被告は、正社員の基本給には勤務地域による差異がないため寒冷地手当で正社員間の公平を図る趣旨であるところ、時給制契約社員の基本賃金は地域別最低賃金を基礎としており、生計費が既に反映されているからこの趣旨が妥当しないと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず寒冷地手当の趣旨について、正社員の基本給が職務内容等によってのみ決定され勤務地域による差異が設けられていないことから、寒冷地域に在勤する正社員に対し暖房用燃料費等の生計費増加分を補助して正社員間の公平を図る趣旨で支給されるものと認定した。他方、時給制契約社員の基本賃金は地域別最低賃金に相当する額を基礎として勤務地域ごとに定められており、地域別最低賃金は「地域における労働者の生計費」を考慮要素の一つとして決定されていることから、勤務地域ごとに必要とされる生計費も考慮された上で地域ごとに定められていると判断した。そのため、時給制契約社員には勤務地域を異にすることによる不公平が生じているとはいえず、寒冷地手当の支給により公平を図る趣旨が妥当しないとした。原告が主張した地域別最低賃金における生計費考慮の不十分さについても、中央最低賃金審議会のランク決定において世帯支出等が考慮要素とされていることを指摘し、勤務地域の生計費が一要素として考慮されていることは明らかであるとして排斥した。以上から、正社員と時給制契約社員の職務内容等に相応の共通点があることを考慮しても、寒冷地手当の不支給は不合理な労働条件の相違には当たらないと結論づけた。