殺人、強盗致傷、逮捕監禁致傷、住居侵入、現住建造物等放火、窃盗、有印私文書偽造、同行使、詐欺、傷害被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3わ2067
- 事件名
- 殺人、強盗致傷、逮捕監禁致傷、住居侵入、現住建造物等放火、窃盗、有印私文書偽造、同行使、詐欺、傷害被告事件
- 裁判所
- 千葉地方裁判所
- 裁判年月日
- 2023年7月24日
AI概要
【事案の概要】 被告人は、事実婚の解消に伴うマンションの権利関係の清算等のために多額の資金を必要としていたところ、母(A)から、リバースモーゲージ制度を利用すればA名義の土地建物を担保に約4000万円の融資を得られるが、同じ敷地内に居住する伯母(F)の存在が融資の障害となっていることを聞いた。被告人は、令和3年4月13日、不凍液(エチレングリコール含有)を購入してウイスキーやコーラに混入し、Fに飲ませた。その後、Aとの共謀の下、外国製の薬と偽ってFに不凍液の原液を飲ませ、さらに意識障害に陥ったFの口に不凍液を注ぎ込んだ上、階段から突き落とし、硬膜下血腫により死亡させた(第4:殺人)。また、被告人は、伯母の元夫であるBから合計3500万円を借り入れていたが、B方から絵画を窃取し、不正入手したクレジットカードで腕時計を詐取するなどしたことがBに発覚して追及を受けるや、令和3年4月25日未明、B方に侵入してエンジンオイルを撒いて放火し、B方を全焼させてBを焼死させた(第7:住居侵入・現住建造物等放火・殺人)。このほか、母Aに対する傷害、強盗致傷・逮捕監禁致傷、ナンバープレートの窃盗等の犯行にも及んだ。 【争点】 F殺人事件については、(1)4月13日に不凍液を飲ませた行為の殺人の実行行為性、(2)殺意の発生時期及び程度、(3)Aとの共謀の成立時期が争われた。B殺人事件については、殺害の目的及び殺意の程度が争われた。弁護人は、Fに対しては体調を悪化させて施設入所に同意させる目的であったと主張し、B方への放火についても殺害目的ではなかったと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、F殺人事件について、被告人の検索履歴に「殺人」「kill」等の殺害手段への関心を示すものが多数ある一方、不凍液投与を途中で止める方法や救命手段を調べた形跡がないことから、4月13日の時点で確定的殺意があったと認定した。不凍液入りの飲料をF方に持ち帰らせていることも踏まえ、死亡するまで追加投与を企図していたとして、4月13日の行為も殺人の実行行為の一部と認めた。B殺人事件についても、放火方法等の多数の検索履歴やエンジンオイルの事前購入等から、遅くとも4月15日時点で確定的殺意があったと認定した。被告人の弁解(空き家を燃やす計画であった等)は、信用できるA証言と矛盾するとして排斥した。量刑判断においては、2名の生命を奪った結果の重大性に加え、いずれの殺人も金銭にまつわる利欲的動機に基づくこと、一定の計画性があること、犯行態様が執拗又は残忍であること、動機の異なる2つの殺人を並行的に実行し生命を奪う意思決定を別個独立に2回行った点を重視した。抗不安薬の影響や生育歴に由来する心理的特性の主張については、犯行への影響は軽微又は限定的であるとして退け、遺族への4500万円の弁償や前科がないこと等を最大限考慮しても有期懲役刑を選択する余地はないとして、無期懲役を言い渡した(求刑:無期懲役)。