AI概要
【事案の概要】 古武道の宗家である原告が、武道関連の出版・映像制作会社である被告に対し、複数の請求を行った事案である。具体的には、(1)被告が制作・販売する武道大会の記録ビデオ・DVDや月刊誌「秘伝」等において、「九鬼神流」「高木楊心流」「義鑑流」「宗家種村匠刀」等の表示を使用したことが不正競争防止法上の不正競争行為(周知な商品等表示の冒用)に当たるとして、差止め・廃棄及び損害賠償合計約3800万円を請求し、(2)同じ表示が原告の商標権を侵害するとして損害賠償合計6000万円を請求し、(3)武道大会における原告の演武を無断撮影・販売したことが肖像権侵害に当たるとして1764万円を請求し、(4)原告出演の柔術ビデオに関する出版契約の債務不履行として約127万円を請求した。請求総額は約1億1000万円超に及んだ。 【争点】 (1)「九鬼神流」「高木楊心流」「義鑑流」「宗家種村匠刀」等の表示が原告の周知な商品等表示といえるか、また被告がこれらを商品等表示として使用したか。(2)被告による上記表示の使用が商標権侵害に当たるか(商標的使用か否か)。(3)公開演武の撮影・ビデオ販売が肖像権侵害に当たるか。(4)出版契約に基づく出演料の未払い額。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をほぼ全面的に棄却し、出版契約の債務不履行に基づく8万4597円のみを認容した。 不正競争防止法違反については、大会ビデオ・DVDのケースやテロップ、雑誌記事における「九鬼神流」「高木楊心流」等の表示は、いずれも大会で演武された流派名やDVD収録内容の説明、記事中の人物の肩書として記載されたものにすぎず、商品の出所を示す商品等表示としての使用には当たらないと判断した。 商標権侵害についても同様に、上記各表示は武術の流派名称や収録内容を説明するものであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できる態様で使用されたものではない(商標的使用に当たらない)として、請求を棄却した。 肖像権侵害については、原告の演武は古武道の振興等を目的とする大会で聴衆に披露するために行われたものであり、撮影されていることも明らかであったこと、ビデオは大会関係者の関与のもとに制作されたこと、原告が約30年間ビデオの販売を問題としなかったこと等を総合考慮し、受忍限度を超える肖像権侵害には当たらないとした。 出版契約の債務不履行については、被告が源泉徴収の名目で出演料から控除した金員につき、源泉徴収義務の存在を認めるに足りる証拠がないとして、控除分の支払義務を認めた。また、出演料算定の基礎となる「定価」は税込み販売価格であると認定し、消費税控除後の額を基礎に計算した被告の支払は不足していたと判断した。ただし、契約解除後の将来の売上相当額の損害については、販売の蓋然性を認める証拠がないとして退けた。