公職選挙法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 令和元年7月21日施行の参議院議員通常選挙に際し、広島県選出議員選挙に立候補する決意を有していたAの選挙運動者である被告人が、Aを当選させる目的で、投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、Aの配偶者であるBから現金20万円の供与を受けたとして、公職選挙法違反(受供与罪)で起訴された事件の控訴審である。被告人は町議会議長を務めていた人物であり、Bが被告人方に現金入りの封筒を置いて立ち去った後、被告人はBを追いかけたものの追いつけず、封筒に「返せ」と記載して金庫に保管していた。原審(広島地裁)は、被告人に受領の意思があったと認定して有罪判決を言い渡した。 【争点】 本件の主要な争点は3つある。第1に、被告人に本件現金を受領する意思が認められるか(事実誤認ないし法令適用の誤り)。弁護人は、被告人は当初から受領拒否の意思を有しており、本件現金は事務管理として保管していたにすぎないと主張した。第2に、原判決の罪となるべき事実の認定と争点に対する判断の説示との間に理由齟齬があるか。第3に、検察官が不起訴を約束ないし暗示して被買収者の供述を獲得し、検察審査会の起訴相当議決を利用して起訴したもので、公訴権の濫用に当たるか。 【判旨(量刑)】 広島高裁は、控訴を棄却した。受領意思について、被告人がBを追いかけたり封筒に「返せ」と記載したことは返還意思をうかがわせるものの、その後約1年間にわたりBに返還することが可能であったにもかかわらず、返還に向けた具体的な行動を一切とらなかった点を重視した。被告人が町議会議長としての立場や自覚を有していたにもかかわらず、Bへの連絡や第三者への相談等の返還努力を何ら行わなかったことは、受領拒否の意思の継続とは相容れないと判断した。また、被告人が祝い金等の別の名目でBに現金を渡す方法を検討していた点についても、もはや返還を断念し本件現金を受領する意思の具体的な表れであると評価した。理由齟齬の主張については、原判決の説示全体をみればBが現金を置いていった頃に受領意思を有するに至ったと読み取れるとして排斥した。公訴権濫用の主張についても、被告人は当初から事実経過をありのまま供述しており利益誘導があったとは認められないこと、検察審査会の起訴相当議決が出たのは100名中35名にとどまることなどから、検察官が議決を確実に想定していたとはいえず、公訴権濫用には当たらないとした。