覚醒剤取締法違反(変更後の訴因|覚醒剤取締法違反、関税法違反)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、営利目的で、令和3年4月30日に中国・香港から覚醒剤(フェニルメチルアミノプロパン塩酸塩)約13万2896.6グラムを隠し入れた海上貨物2個を日本に発送し、同年5月5日に東京港に陸揚げさせて本邦に輸入するとともに、同月26日に保税蔵置場から搬出させ、関税法上輸入してはならない覚醒剤を輸入したとして、覚醒剤取締法違反及び関税法違反で起訴された事案である。捜査機関はライブ・コントロールド・デリバリーの手法により犯人検挙を図り、貨物配送時にトラックを運転して受け取ろうとした被告人を特定したが、被告人は異変を察知して貨物を受け取ることなく逃走した。 【争点】 被告人が、本件貨物が密輸品であるかもしれないこと及びその密輸品が覚醒剤を含む違法薬物であるかもしれないことを認識していたか否かが争点となった。被告人は、愛人のCから、Cの知人のために防舷材(船体保護材)を受け取ってほしいと頼まれて応じただけであり、貨物が輸入品であるとは思わず、中身は防舷材であると思っていたと主張した。 【判旨】 裁判所は、検察官の主張を逐一検討した上で、被告人の故意を認定できないとして無罪を言い渡した。第一に、被告人が国際的密輸組織の確保した受取人であるとの主張については、組織が用意したとされる携帯電話機を被告人が所持していたと推認するには証拠が不十分であり、また組織と関係するCが被告人を把握している以上、被告人に違法薬物の存在を知らせずとも覚醒剤を回収できるとした。第二に、被告人が自身の関与を隠す特異な行動をとっていたとの主張については、被告人が本名でトラックやフォークリフトを借りるなどしており、関連発覚を避ける行動とはいえないとした。偽名の使用や逃走についても、被告人の説明は不合理とはいえないと判断した。第三に、高額支出の点については、立替えにすぎないとする被告人の説明が不合理とはいえないとした。第四に、共犯者Eが被告人から覚醒剤の存在を聞いたとする供述については、Eの供述に大きな変遷があり、質問者や質問の仕方によって供述を変え、自身の事件との混同も認めるなど、核心部分を含め相当に揺らいでおり、有罪判断の根拠とするだけの信用性がないとした。以上を総合し、犯罪の証明がないとして刑訴法336条により無罪を言い渡した(求刑:懲役20年及び罰金1000万円)。