AI概要
【事案の概要】 キッチンウェア等の製造販売を行う原告は、「スチーム調理用蓋付きトレー」に関する意匠権(意匠登録第1616424号、平成30年9月28日登録)を有していた。この製品は、水を張ったフライパンや鍋の上に載せて蒸し調理を行うための器具で、トレー状の台座部と取手部付きの蓋部からなるものである。原告は、被告が遅くとも令和4年1月から販売等していたスチーム調理用蓋付きトレー(被告製品)が原告の登録意匠に類似し、意匠権を侵害するとして、意匠法37条1項に基づく被告製品の製造・販売等の差止め、同条2項に基づく被告製品の廃棄、及び民法709条に基づく損害賠償金600万円(意匠法39条2項による推定)の支払を求めた。 【争点】 主な争点は、本件意匠と被告意匠の類否(争点1)及び損害額(争点2)であった。原告は、両意匠の差異は全体デザインからみれば微差にすぎないと主張した。これに対し被告は、蓋部の取手部の形状(笠状かハンドル状か)、蒸気通過孔の配置・配列、蓋部の形状(ドーム状か中央平坦面か)、蓋部における合成樹脂部分の範囲、台座部の円形支承板面部の形状、台座部の大きさという6つの差異点を挙げ、特に取手部の形状は需要者にとって革新的なデザインの変化であり、要部における差異であると主張した。 【判旨】 裁判所は、意匠の類否判断について、登録意匠に係る物品の性質・用途・使用態様を考慮し、公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して要部を把握し、両意匠を全体的に観察・対比すべきとの判断枠組みを示した。まず、本件意匠の需要者は個人消費者であり、主にトレーと蓋が一体化した状態で上方又は斜め上方から視認すると認定した。次に、本件意匠登録出願前に公知であった意匠(意匠登録第1219229号)を参酌し、基本的構成態様の形状は既に公知であったことから、本件意匠の要部は、蓋部の各部位における曲率等の具体的形状及び取手部の具体的形状等にあると判断した。その上で、取手部について本件意匠が笠状であるのに対し被告意匠はハンドル状で蓋部の対称性を崩すものであること、蓋部について本件意匠がドーム状であるのに対し被告意匠は中央が水平な平坦面であること、台座部の蒸気通過孔の配置も異なる印象を与えることなどから、要部において顕著な差異があり、差異点が共通点を凌駕していると認定し、両意匠は類似しないと判断して、原告の請求をいずれも棄却した。