AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和2年10月6日、SNSで知り合った被害者(当時24歳)と初めて会い、京都市内の被害者方で一緒に過ごしていたところ、同日夜から翌7日夜までの間に、被害者の左胸部、左頸部、顔面及び背部等を折りたたみナイフ(刃体約8cm)で19か所にわたり突き刺し、胸部刺創による心タンポナーデにより死亡させた(殺人)。さらに、被告人は被害者方からニンテンドースイッチ、iPhone、iPad、プレイステーション4一式等9点(時価合計約13万1300円相当)を窃取した(窃盗)。被告人は犯行後、被害者のiPhone等のデバイス情報を自身の情報に変更し、SIMカードを抜き取った上で自宅に持ち帰り、玄関を施錠して鍵を捨てるなどしていた。約1か月半後の11月21日に逮捕された。 【争点】 本件の主な争点は、殺人について①殺意の有無と②正当防衛又は過剰防衛の成否、窃盗について③不法領得の意思の有無であった。被告人は、被害者が突然怒り出して長時間罵倒した後、被告人のウエストポーチからナイフを取り出して「死にたいなら死ね」と襲いかかってきたため、ナイフを奪い取って反撃した旨供述し、弁護人は正当防衛又は過剰防衛を主張した。また、窃盗については、iPhone等は証拠隠滅目的で持ち出したもので不法領得の意思がなく、ACアダプターは自分の物と間違えた、プレイステーション4は被害者からもらったものだと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、殺意について、刃体約8cmの殺傷能力を有するナイフで身体の枢要部を中心に19か所も突き刺し、肋骨を貫通するほどの力で左胸部を刺した上、致命傷を負わせた後もなお左頸部や背部を深く突き刺していることから、人が死ぬ危険性が高い行為をその認識のもとに行ったと認定し、殺意を認めた。正当防衛の主張については、被告人の供述が客観的な受傷の先後関係や被害現場の血痕状況、死斑の状態と矛盾すること、被害者の防御創が極めて少ないこと、初対面の被害者が突如ナイフで襲いかかるという供述内容自体が不自然であること、犯行直後の通話で被害者から襲われた旨を述べていないこと等から、被告人の供述は信用できないとして排斥した。窃盗についても、証拠隠滅目的といいながら自身の個人情報を端末に入力して自宅に保管し続けた点など、供述が不自然・不合理であるとして不法領得の意思を認定した。量刑判断では、犯行態様が相当に執拗で悪質であり強固な殺意に基づく犯行である一方、計画性は認められず、犯行当時20歳であったこと等を考慮し、求刑懲役20年に対して懲役18年を言い渡した。