AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「プログラム」とする特許出願(分割出願)について、特許庁が進歩性欠如を理由に拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決に対し、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。 本願発明は、タッチパネルディスプレイを有する制御装置に関するもので、スピーカを有するがテレビではない制御対象機器の音質又は音量を、タッチ操作によって制御する技術に係る。その特徴的構成は、制御対象機器との通信が可能でない場合には、制御対象機器の状態を示す表示態様を更新できないとする点にある。これにより、タッチパネルディスプレイ上の表示と制御対象機器の実際の状態との間に齟齬が生じることを防止するものである。 本件審決は、甲1(リモートコントローラによる音量制御に関する公報)に記載された発明と、甲4(デジタルカメラによるテレビ制御に関する公報)から認定される公知技術(通信不能時に操作を無効にする技術)とに基づき、本願発明は当業者が容易に想到し得たものであると判断した。 【争点】 主な争点は、(1)甲4に記載された技術を上位概念化して公知技術(本件技術)を認定することの当否、(2)甲1に記載された発明と本件技術との技術分野の関連性の有無、(3)甲1に記載された発明に本件技術を適用する動機付けの有無、(4)本件技術を適用した場合に相違点に係る本願発明の構成に至るか否かである。原告は、甲4の技術はデジタルカメラとテレビに固有のものであり不当に上位概念化されていること、両者の技術分野に関連性がないこと等を主張した。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を棄却した。まず、甲1に記載された発明について、通信不能の場合を想定した発明ではないが、そのような場合を技術的にあり得ないものとして排除してもいないと認定した。次に、甲4に記載された技術について、制御主体や制御対象機器を特定の機器に限定しないものとして公知技術を認定することは不当な上位概念化に当たらないとし、乙1ないし3の記載も参酌して、制御主体・制御対象機器の具体的内容に特段の技術的意義はないと判断した。技術分野の共通性については、いずれも無線通信を利用して電子機器の制御を行う技術に係るものとして共通すると認め、動機付けについても、無線通信において通信不能が生じ得ることは公知の事実であり、当業者は引用発明に内在する課題を認識し得たとした。さらに、本件技術を適用することで「状態表示の表示態様を更新できない」との構成に至ることができると認め、審決の判断に誤りはないと結論づけた。