AI概要
【事案の概要】 本件は、英国の靴ブランド「ドクターマーチン」を展開する原告(エア・ウェアー・インターナショナル・リミテッド)が、靴の上部とソール(靴底)の境界部分の外周に沿った位置に黄色の破線を配置してなる位置商標(いわゆる「イエローステッチ」)について商標登録出願をしたところ、特許庁が商標法3条1項3号(商品の形状等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)に該当し、かつ同条2項(使用による識別力の獲得)の要件も満たさないとして拒絶審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。原告は、イエローステッチが1960年のブランド創設以来60年以上にわたり使用されてきた象徴的な特徴であり、日本でも1985年頃から継続販売され、年間約46〜47万足・売上高約59〜64億円の実績があること、アンケート調査で38〜61%の認知度があること等を主張した。 【争点】 (1) 本願商標の商標法3条1項3号該当性(商品の形状等を普通に表示する標章か否か) (2) 商標法3条2項該当性(使用による自他商品識別力を獲得したか否か) 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。 争点(1)について、裁判所は、グッドイヤーウェルト製法では靴の境界部分にステッチが現れるのは通常のことであり、また、アッパーやアウトソールが黄色系統の靴製品の場合には美観上の目的からウェルトステッチに黄色の糸を使用するのが一般的であるとして、本願商標は指定商品の形状として普通に用いられるものであり、同号に該当すると判断した。 争点(2)について、裁判所は、黒色の革靴やブーツに用いられた場合には本願商標の視認性が高く、アンケート結果からも相当程度の認知度があることを認めつつも、本願商標が黄色やベージュのアウトソール・ウェルトとともに用いられた場合には視認性に優れず需要者の目を引くとはいえないと指摘した。そして、商標権の範囲は願書の記載に基づいて定められるところ、本願商標は下地の色を黒に限定するものではないから、黒色の場合の認知度のみをもって本願商標全体の認知度を評価することは相当でないとし、黒以外の色の革靴・ブーツに用いられる場合の認知度が高いと認めるに足りる証拠はないとして、商標法3条2項の要件を満たさないと結論づけた。