AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(ディズニー エンタープライゼス インコーポレイテッド)が、「ハイダイナミックレンジトーンマッピング」と題する特許出願について拒絶査定を受け、不服審判請求をしたところ、特許庁が手続補正を却下した上で審判請求を不成立とする審決をしたことから、同審決の取消しを求めた事案である。本件出願に係る発明は、ハイダイナミックレンジ(HDR)ビデオのトーンマッピングに関するものであり、HDRビデオのフレームからベースレイヤーを生成し、そのベースレイヤーからトーンカーブパラメータ(統計的照度値)を導出した上で、以前のフレームから導出されたトーンカーブパラメータを用いて時間フィルタリングを行い、時間コヒーレントベースレイヤーを生成するという方法に関するものである。この技術は、HDRビデオのトーンマッピングにおいて、フレーム間の急激な明るさの変化(フラッシュ)を低減するという慢性的な課題の解決を目的としていた。審決は、本件発明は先行技術文献(甲1:欧州特許出願公開第2144444号)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして、進歩性を否定した。 【争点】 主な争点は、(1)甲1に記載された発明の認定の当否、及び(2)相違点についての判断の当否(本件周知技術の認定の可否及び甲1発明への適用に係る動機付けの有無)である。相違点は、時間コヒーレントベースレイヤーを生成するための具体的方法が、本件発明ではトーンカーブパラメータの時間フィルタリングによる方法であるのに対し、甲1発明ではルックアップテーブルによる時間変化の小さいトーンマッピング関数を使用する方法である点にあった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1(甲1発明の認定の誤り)について、裁判所は、甲1の段落【0020】及び段落【0038】ないし【0042】の記載から、審決が認定した甲1発明を認定し得るとして、審決の認定に誤りはないと判断した。取消事由2(相違点の判断の誤り)について、裁判所は、まず甲2ないし甲4の各文献を詳細に検討し、いずれの文献にも「フレーム毎に平均輝度値を算出し、算出した平均輝度値を複数のフレームで平滑化し、平滑化した平均輝度値を用いて現在のフレームのトーンカーブを補正する」という本件周知技術が開示されていると認定した。動機付けについても、甲1発明と本件周知技術はいずれもHDRビデオのトーンマッピングという同一の技術分野に属し、本件周知技術は甲1発明の課題を解決するための技術であること、さらに甲3には甲1発明のようなLUTを用いる構成に代えて本件周知技術を採用し得る旨の示唆があることから、十分な動機付けがあると判断した。以上により、本件発明の進歩性を否定した審決の判断に誤りはないと結論付けた。