AI概要
【事案の概要】 本件は、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を配合した高齢者向け健康食品「NMN 9000+ PURE VIP」(1瓶あたり約34万5600円)を製造・販売する原告が、被告会社による模倣品の製造・販売により損害を受けたとして、被告会社に対しては不法行為(民法709条、710条又は715条1項)に基づき、被告会社の代表取締役である被告Aに対しては会社法429条1項に基づき、連帯して1100万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 原告は平成29年6月から原告商品の販売を開始していたところ、被告会社は令和2年2月頃から、原告商品の外箱・容器とほぼ同一の外観・形状を持つ被告商品を製造し、中国向けに508個を販売していた。しかし、被告商品にはNMNが含まれていないか、含まれていたとしてもわずか4mg(原告商品は約150mg)にすぎず、粉末の性状も原告商品とは全く異なる粗悪品であった。原告は、被告会社の元従業員Cからの内部告発により被告商品の存在を知り、弁護士への相談や刑事告訴の検討等の調査活動を行った上で本訴を提起した。なお、被告Aは公示送達による呼出しを受けたが出頭せず、答弁書も提出しなかった。 【争点】 主な争点は、(1)被告会社による被告商品の製造・販売が不法行為に該当するか、(2)被告Aに会社法429条1項の責任が認められるか、(3)原告の損害額(無形損害945万円、調査費用55万円、弁護士費用100万円の合計1100万円の請求の当否)であった。 【判旨】 裁判所は、被告商品の外箱・容器が原告商品とほぼ同一の外観・形状であることから、被告商品の販売は少なくとも不正競争防止法2条1項3号(形態模倣)に該当する不正競争に当たると認定した。その上で、被告会社には使用者責任(民法715条1項)が成立し、被告Aについても被告会社社内に大量の被告商品が保管されていたこと等から悪意又は重過失があったと認めた。 しかし、損害額については原告の請求を大幅に減額した。まず、無形損害(信用毀損)945万円の請求については、被告商品が日本国内で販売された事実を認める証拠がなく、原告商品の国内販売額の減少もないこと、中国での流通についても具体的事情が不明であることから、信用毀損の結果が生じたことを認めるに足りる証拠がないとして全額を否定した。調査費用55万円の請求については、弁護士への法律相談等に要した42万5440円のうち20万円のみを相当因果関係のある損害と認め、社内調査の人件費相当額は追加的な報酬支払の事実がないとして否定した。弁護士費用100万円の請求についても2万円のみを認容した。 以上により、裁判所は合計22万円の限度で原告の請求を認容し、その余を棄却した。請求額1100万円に対し認容額22万円という結果は、模倣品事案において具体的な損害の立証の重要性を示すものといえる。