AI概要
【事案の概要】 本件は、半導体製造装置メーカーである原告(株式会社東京精密)が、光半導体メーカーである被告(浜松ホトニクス株式会社)に対し、レーザ加工技術に関する特許権の帰属を巡って損害賠償等を求めた事案である。被告は、レーザ光をウェハ内部に集光して改質層を形成し切断する「ステルスダイシング技術」を開発し、原告はその事業化に向けた業務提携を提案した。両社は平成14年に業務提携準備契約(本件準備契約)を締結し、試作機の共同開発を行った。本件準備契約6条1項は、共同開発の成果の帰属について、「SDエンジンに関する本成果」は被告に帰属し、「ステルスダイシング技術及びSDエンジンに関しない本成果」は共有とする旨定めていた。被告は、レーザ加工方法等に関する2件の特許(本件特許1・2)を単独で出願・登録し、原告に対して特許権侵害訴訟(別件訴訟)を提起するとともに、原告の競合他社に実施許諾を行った。原告は、本件各特許権は契約上共有となるべきであり、被告の行為は不法行為に当たるなどとして、1億円の損害賠償又は不当利得返還を求めた。 【争点】 主要な争点は、本件準備契約6条1項の解釈、すなわち本件各発明が「SDエンジンに関する本成果」として被告に単独帰属するか、それとも原告・被告の共有となるかであった。原告は、同条項の「ステルスダイシング技術及びSDエンジンに関しない本成果」との文言について、「ステルスダイシング技術に関する本成果」と「SDエンジンに関しない本成果」がいずれも共有になると解釈すべきであり、本件各発明にはSDエンジンの定義から除外されたステージの制御等が含まれるから共有に該当すると主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。まず契約解釈について、「ステルスダイシング技術」は契約締結時に被告が既に有する技術を指すものであるから、これに関する成果が共有となるとする原告の解釈は不合理であるとした。契約の目的・趣旨や文理、業務提携の経緯等を踏まえ、同条項は「ステルスダイシング技術及びSDエンジン」に関しない本成果のみが共有となる旨を定めたものと解釈した。そして「SDエンジンに関する本成果」とは、発明の特徴的部分がSDエンジンに関する発明等をいうと解した上で、本件発明1の特徴的部分であるレンズ高さの調整機構も、本件発明2の特徴的部分であるパルスレーザ光のピッチ制御も、いずれもSDエンジンに関するものであると認定した。原告が主張するステージの制御等は従来技術の域を出ず、発明を特徴付けるものとは認められないとして、本件各特許権はいずれも被告に単独帰属すると判断した。