AI概要
【事案の概要】 原告は、岐阜県関ケ原町が実施した「関ケ原検定」(関ケ原の戦いに関する知識等を問う検定事業)に関連して、自らが創作したと主張するポスター、募集要項、合格証書、合格カード等のデザイン(著作物)及び商標が無断で使用されたとして、関ケ原町の公務員である被告ら3名(歴史民俗学習館館長、地域振興課係長、町長)に対し、著作権法に基づく複製・頒布の差止め及び物品廃棄、商標法に基づく役務提供の差止め、著作権法115条に基づく名誉回復措置(ホームページ上での著作権帰属の公表)、並びに不法行為に基づく損害賠償347万4000円の支払いを求めた事案である。 原告は、関ケ原検定のジャンパー、ポスター、募集要項、合格証書及び合格カードに使用されたデザインを単独で創作したと主張した。一方、被告らは、これらのデザインは関ケ原町職員と原告の共同制作であり、原告は関ケ原検定での使用を許諾していたと反論するとともに、被告らの行為は関ケ原町の公権力の行使として行われたものであるから、公務員個人は責任を負わないと主張した。 【争点】 主な争点は、①関ケ原町の公務員である被告ら個人が損害賠償責任を負うか(国家賠償法1条1項の適用)、②差止めの必要性があるか、③名誉回復措置の要件を満たすかであった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 第一に、損害賠償請求について、国家賠償法1条1項により、公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を与えた場合には、国又は公共団体のみが賠償責任を負い、公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わないとする最高裁判例(最判昭和30年4月19日、最判昭和53年10月20日)を引用した。その上で、関ケ原検定は関ケ原町歴史民俗学習館内の実行委員会名義で実施され、関ケ原町が広報として行った事業であり、原告が問題とする行為はいずれも関ケ原町が公権力の行使としてしたものであると認定し、仮に著作権や商標権の侵害があったとしても、被告ら個人は損害賠償責任を負わないと判断した。 第二に、差止め等の請求について、原告からの警告を受けて関ケ原町は令和3年7月に関ケ原検定事業を中止しており、その後検定は実施されていないことから、現時点で原告の著作物や商標を利用する事業を行うおそれがあるとは認められず、差止めの必要性がないとした。 第三に、名誉回復措置の請求について、著作権法115条に基づく措置の前提となる著作者人格権侵害に関する主張がなく、請求の前提を欠くとして退けた。 本判決は、地方公共団体の事業における著作権侵害が問題となった場合に、国家賠償法の壁により公務員個人への請求が認められないことを改めて示した事例であり、被害者としては国又は公共団体を被告とすべきであったという実務上の教訓を含むものである。