債務不存在確認請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、BitTorrent(ビットトレント)と呼ばれるファイル共有ソフトを使用してアダルト動画をダウンロードした原告が、当該動画の著作権者である被告(映像制作・販売会社)から著作権侵害に基づく損害賠償請求を受けたことに対し、損害賠償債務が3万円を超えては存在しないことの確認を求めた債務不存在確認請求訴訟である。 原告は令和3年10月25日、ビットトレントを通じて本件動画ファイル(販売価格1450円)を約3時間かけてダウンロードし、翌日視聴したが途中でファイルを削除した。ビットトレントは、ダウンロードと同時に他のユーザーへのアップロード(送信可能化)も自動的に行われる仕組みであるため、原告のダウンロード行為は同時に著作権(送信可能化権)の侵害となった。被告はプロバイダへの発信者情報開示請求を経て原告を特定し、原告との和解交渉が不調に終わったため、原告が本件訴訟を提起した。 【争点】 本件著作物に係る著作権侵害による損害の発生及びその額が争点となった。被告は、主位的に、原告はビットトレント上の一体行為に参加したものとして本件ファイルの最初のアップロード以降の全損害(約278万円)について共同不法行為責任を負うと主張し、予備的に、原告の使用期間中のダウンロード回数に基づく損害額(約178万円)を主張した。これに対し原告は、送信可能な状態にあった3時間に限り責任を負うにとどまるとし、寄与度減額、過失相殺(被告の損害拡大防止義務違反)、権利濫用も主張した。 【判旨】 裁判所は、共同不法行為(民法719条1項前段)の成立には行為者各自の行為の客観的関連共同性を要するとした上で、原告がビットトレントを通じて本件ファイルを他のユーザーに送信可能な状態にあった期間に限り共同不法行為責任を負うと判断した。具体的には、原告はパソコンを常時接続せず使用時以外はシャットダウンしていたこと、ダウンロード完了後にトレントファイルを削除し翌日には本件ファイル自体も削除したことから、送信可能な状態にあったのはダウンロード中の約3時間に限られるとした。その上で、当該3時間のダウンロード回数547回に販売価格1450円及び利益率38%を乗じ、24時間中3時間の割合で按分して、損害額を3万7675円と認定した。原告の寄与度減額の主張については、指摘する事情をもって減免責すべき事情には当たらないとして排斥し、過失相殺及び権利濫用の主張もその前提を欠くとして退けた。結論として、原告の損害賠償債務は3万7675円を超えて存在しないことを確認した。