著作権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(個人)は、独立行政法人国際協力機構(JICA)との委託契約に基づきフィジーに派遣され、フィジーの防災ポリシー(National Disaster Risk Reduction Policy 2018-2030)の作成に携わった。控訴人は、同ポリシーの著作権は自己に帰属すると主張し、JICAがその著作権を取得したとしてフィジー政府に譲渡したことが不当利得に当たるとして、3000万円の不当利得返還を求めて提訴した。原審(東京地裁)は控訴人の請求を全部棄却し、控訴人が金銭請求部分に限定して控訴した。 【争点】 主な争点は、①本件ポリシーに係る著作権の帰属(控訴人に帰属するか、委託契約に基づきJICAに移転したか)、②JICAが著作権をフィジー政府に譲渡したことによる不当利得の成否、③派遣期間満了後に控訴人が行った修正部分の著作権の帰属である。控訴人は、防災ポリシーの作成は委託契約の業務範囲外であり著作権は自己に帰属すると主張した。また、フィジーが防災援助の重点国に指定され50億円規模のODA予算が計上されたことがJICAの利得に当たると主張した。JICAは、ポリシー案の作成は委託契約に基づく業務の一環であり、著作権は契約10条1項に基づきJICAに移転し、その後フィジー政府に無償譲渡済みであると反論した。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却した。まず不当利得について、仮に著作権が控訴人に帰属するとしても、JICAが著作権を有償譲渡して対価を得たのであれば格別、本件ではJICAがフィジー政府に著作権を譲渡したことで財産的利益を受けたと認めるに足りる証拠はないとした。防災関連ODA予算の計上等はJICAの財産上の利益とはいえず、不当利得の成立を基礎づけないと判断した。さらに念のため著作権の帰属についても判断を示し、控訴人が提出した月例報告書や帰国報告等から、防災ポリシーの作成が専門家業務に該当することは控訴人とJICAの共通認識であったと認定した。本件完了報告書の記載も、業務内容の変更の範囲内として成果品となったことを示すものであるとした。また、派遣期間満了後の修正作業はJICAを介さず控訴人がフィジー政府と直接行ったものであり、JICAが修正部分の著作権侵害を追及されるいわれはないとした。