覚醒剤取締法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和4年6月20日に名古屋地方裁判所で覚醒剤取締法違反等により懲役1年8月・執行猶予3年の判決(名古屋事件判決)を受けたにもかかわらず、その宣告からわずか10日足らずの同月28日頃、千葉県柏市内の自宅で覚醒剤を加熱吸引して使用し(第1)、翌29日には同市内の駅デッキ上で覚醒剤約0.062グラムを所持した(第2)という事案である。原審(千葉地裁松戸支部)は被告人を懲役1年4月の実刑に処したところ、弁護人が量刑不当を理由に控訴した。 【争点】 弁護人は、(1)本件は覚醒剤所持量が少なく使用も1回で同種前科もないため一般的に執行猶予相当の事案であり、未確定の名古屋事件判決を量刑資料とすることは無罪推定原則に反する、(2)被告人は専門病院Bでの薬物依存治療や回復支援施設Cでの支援プログラムを受け成果を上げており原判決はこの考慮が不十分である、(3)芸能活動を行っていた被告人は社会的制裁を多大に受けている、(4)名古屋事件と併合罪として処理されれば執行猶予が付される事案であるのに別々に審理された結果、通算懲役3年の実刑相当となるのは刑法47条に違反する、と主張した。 【判旨(量刑)】 東京高裁は、原判決の量刑判断は相当であると基本的に是認した。被告人は名古屋事件で執行猶予判決を受けた直後に再び覚醒剤犯罪に及んでおり、覚醒剤に対する親和性が根深く規範意識が希薄であって、意思決定に対する非難の程度は高いとした。無罪推定原則違反の主張については、原判決は再犯関係として捉えたのではなく覚醒剤親和性や無責任な意思決定を非難したものであると退けた。社会的制裁や併合罪に関する主張についても、量刑を大きく動かす事情には当たらないとした。 もっとも、原判決後の事情として、(1)主治医の意見書によれば治療状況は良好で今後も継続が期待できること、(2)回復支援施設Cで準職員として施設運営に関わるまでに至っていること、(3)被告人が自らの甘さを深く自覚し治療継続と啓発活動への意欲を示していること、さらに名古屋事件判決が令和5年6月27日に確定し本件が併合罪の関係となったことを考慮すると、執行猶予を付すまでには至らないものの刑期の点でいささか重過ぎるとして、原判決を破棄し、懲役1年に減軽した。