傷害致死、傷害、証拠隠滅教唆被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 傷害致死、傷害及び証拠隠滅教唆の各罪に問われた被告人が、第1審の有罪判決に対する控訴を棄却されたことを受け、上告した事案である。被告人は、他人に傷害を負わせて死亡させた傷害致死及び傷害の事実に加え、自己の刑事事件に関する証拠を他人に隠滅させた証拠隠滅教唆の事実についても有罪とされていた。 【争点】 主な争点は2点である。第1に、被告人の有罪認定が自白のみに基づくもので憲法38条3項(自白の補強法則)に違反するか。第2に、犯人が他人を教唆して自己の刑事事件に関する証拠を隠滅させた場合に、刑法104条の証拠隠滅罪の教唆犯が成立するか否かである。後者の論点は、犯人自身が自己の証拠を隠滅しても証拠隠滅罪は成立しない(期待可能性の欠如)とされていることから、犯人が他人を教唆して行わせた場合にまで教唆犯の成立を認めてよいかという刑法上の重要論点である。 【判旨(量刑)】 最高裁第一小法廷は上告を棄却した。憲法38条3項違反の主張については、第1審判決は被告人の自白のみで有罪としたものではなく、自白以外の証拠をも総合して有罪を認定しており、主張は前提を欠くとした。証拠隠滅教唆の点については、「犯人が他人を教唆して自己の刑事事件に関する証拠を隠滅させたときは、刑法104条の証拠隠滅罪の教唆犯が成立すると解するのが相当である」と判示し、昭和40年最高裁決定を引用して教唆犯の成立を認めた原判断を正当とした。未決勾留日数中120日が本刑に算入された。 【山口厚裁判官の反対意見】 山口厚裁判官は、被告人に証拠隠滅罪の教唆犯の成立を認めることは相当でないとの反対意見を述べた。その理由は、令和3年の犯人蔵匿・隠避罪の教唆犯に関する最高裁決定で述べた自身の反対意見と趣旨において同一であるとし、犯人自身による証拠隠滅が不可罰である以上、他人を教唆して行わせた場合にも教唆犯は成立しないとの立場を示した。