不正競争行為差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、中圧Bガス供給用のガス遮断弁(ガスバルブ)を販売するドイツ企業シーメンスが、同種製品を販売する日本の被控訴人(バルブ業界の上場企業)に対し、不正競争防止法2条1項1号に基づく差止め及び廃棄を求めた事案の控訴審である。控訴人は、原告製品の形態が控訴人の商品等表示として需要者の間に広く認識されており、被控訴人が類似の形態の製品を製造・販売する行為は不正競争行為に該当すると主張した。原審(東京地裁)は、原告製品の形態は商品等表示に該当せず、仮に該当するとしても誤認混同は生じないとして請求を棄却していた。 【争点】 主な争点は、①原告製品の形態が不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当するか、②被告製品の販売等により需要者に混同のおそれが生じるか、である。控訴審では事案に鑑み、まず混同のおそれ(争点②)から検討した。控訴人は、原告製品が20年以上にわたり市場シェアほぼ100%を維持してきた唯一無二の存在であり、需要者は被告製品を見て無断コピー品との印象を持つか、両社間に緊密な関係があると誤信するおそれがあると主張した。また、不競法が譲渡時のみならず需要者が商品に接する時点での混同も保護する趣旨であると主張した。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却した。裁判所は、中圧Bのガス遮断弁の需要者は約30社の専門事業者であり、製品の安全性・信頼性を重視し、製品内部の動作や構造について詳細な情報を要求して2〜3年かけてテストを繰り返しながら導入を検討するという取引実情を認定した。需要者は製造元・販売元の信用やサポート体制も熟慮した上で購入を決定し、発注時には専用システム等により製造者名・型式・型番等を特定するものであるとした。このような取引の実情に照らすと、仮に需要者が製品の形態から特定の出所を想起し得るとしても、相応の期間と調整を要する取引過程において容易に出所を識別するに至るから、製品形態から想起し得る出所が購買行動に与える影響は極めて限定的であると判断した。控訴人の主張についても、原告製品の周知性を考慮しても上記取引実情の下では混同のおそれは認められず、また、需要者が商品に接する時点での混同の主張についても同様に理由がないとして、いずれも採用しなかった。