傷害、現住建造物等放火被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和4年9月、北海道登別市内の歩道上で、隣人である被害者C(当時75歳)の足又は腰付近を両手でつかんで押し転倒させ、全治約3か月間を要する左足関節脱臼骨折の傷害を負わせた(第1事実・傷害罪)。さらに、同年12月、Cが現に住居として使用する二軒長屋(木造平家建、床面積約62.1平方メートル)において、放火して自殺しようと考え、居室内のスチールラックに吊るされたビニール袋にライターで点火し、火を壁及び天井等に燃え移らせ、同二軒長屋の一部(焼損床面積約30.01平方メートル)を焼損した(第2事実・現住建造物放火罪)。被告人は第2の犯行当時、残遺型統合失調症の影響により心神耗弱の状態にあった。 【争点】 本件の主な争点は、第2事実(放火)に関する被告人の責任能力であった。弁護側・検察側ともに心神耗弱を主張し、裁判所もこれを認定した。D医師の公判供述によれば、被告人は中等度の残遺型統合失調症にり患し、被害関係妄想を有し、問題解決能力が著しく低下していた。裁判所は、被告人が放火の際に火を点ける場所を考えたり煙が濃くなると避難するなど周囲の状況を適切に認識して行動できていた一方で、放火に至る経緯には統合失調症による問題解決能力の著しい低下が影響しており、隣人とのトラブルや被害妄想に加え、日常生活上のストレスを溜め込んで耐えられなくなった末の犯行であるとして、是非弁別能力は残存するものの行動制御能力が著しく低下した心神耗弱状態にあったと判断した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役3年・執行猶予5年に処した(求刑懲役4年)。量刑判断の中心となる放火について、ライター在中のビニール袋に火を放った行為は、居室内に雑誌や灯油入りポリタンクが多数存在していたことから、隣人Cの生命・財産を害する危険が高く、被告人もその危険性を十分理解していたと認定した。二軒長屋が一部焼損しCが引越しを余儀なくされた結果は重いとしつつ、放火に至る経緯に統合失調症による問題解決能力の著しい低下が影響していたこと、被告人に社会的・医療的サポートが十分に与えられていなかったことを相当程度有利に考慮した。傷害についても、長年にわたるトラブルやCの言動に照らし、Cもけんかをするつもりだった可能性を否定できず、傷害結果には偶発的側面もあるとして、被告人ばかりを非難できないとした。以上を総合し、執行猶予付きの判決が相当と判断した。