AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(トヨタ紡織)が、被告(三井ハイテック)の有する特許第6180569号(発明の名称「永久磁石の樹脂封止方法」)について特許無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、回転子積層鉄心の磁石挿入孔に永久磁石を樹脂封止する方法に関し、上型及び下型の間に回転子積層鉄心を配置し、上型及び下型同士が当接することなく回転子積層鉄心を押圧して樹脂封止することを特徴とする。原告は、分割要件違反を前提とする新規性・進歩性の欠如(取消事由1・2)、甲5を主引用例とする進歩性の欠如(取消事由3)、補正要件違反(取消事由4)、実施可能要件違反(取消事由5)、サポート要件違反(取消事由6)、明確性要件違反(取消事由7)を主張した。 【争点】 主な争点は、(1)本件出願が最初の親出願からの分割要件を満たすか(出願日の遡及の可否)、(2)甲5発明に基づく進歩性欠如の有無、(3)本件補正が新規事項の追加に当たるか、(4)実施可能要件違反の有無、(5)サポート要件違反の有無、(6)明確性要件違反の有無である。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、事案に鑑みまずサポート要件(取消事由6)について判断し、原告の主張を認めて審決を取り消した。裁判所は、本件発明の課題として、従来技術における「積層鉄心を下型の有底穴部に嵌挿し、加熱後に取り出す作業の作業性の悪さ」を解決し、生産性・作業性に優れた樹脂封止方法を提供することを認定した。その上で、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施形態では、搬送トレイが回転子積層鉄心を下型上に固定し取り外す工程において不可欠の構成とされているにもかかわらず、本件発明の特許請求の範囲は搬送トレイを構成に含まない発明をも包含していることを指摘した。搬送トレイを用いずに上記課題を解決するための代替構成について、明細書に具体的な示唆はなく、当業者が出願時の技術常識に照らしても課題解決を認識できるとはいえないとして、本件発明は発明の詳細な説明に記載されていない発明を含むからサポート要件(特許法36条6項1号)を満たさないと判断した。その余の取消事由について判断するまでもなく、審決は取り消されるべきものとした。