AI概要
【事案の概要】 日本電気株式会社に勤務していた亡Aが、平成26年4月3日に右被殻出血を発症し死亡したことについて、その相続人である控訴人(妻)が、労災保険法に基づく遺族補償給付を請求したところ、岡山労働基準監督署長がこれを不支給とする処分をしたため、同処分の取消しを求めた事案である。亡Aは本件会社の支店長として勤務しており、取引先との打ち合わせやトラブル対応等の業務に従事していた。原審(福岡地裁)は業務起因性を認めず請求を棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、亡Aの脳出血発症について業務起因性が認められるか否かであり、具体的には以下の点が争われた。①発症前6か月間の時間外労働時間数の算定方法(労働時間集計表の計算誤りの有無)、②取引先とのゴルフが労働時間に該当するか、③iPadのスケジュール記録に基づく休憩時間の認定、④複数の出張日(平成26年3月26日、同年1月17日、平成25年11月13日、同年10月24日)における始業・終業時刻の認定が争われた。 【判旨】 控訴認容(原判決取消し、処分取消し)。裁判所は、原判決の労働時間認定を複数の点で補正した。まず、iPadのスケジュール記録について、本件スケジュール表を補充する記載がされている日については、iPadの記載に基づき休憩時間を30分と認定した。次に、個別の出張日について、平成25年11月13日は双葉工機の担当者のスケジュールや運転日報等から始業時刻を午前8時30分と認定し、平成26年3月26日はライフパーク倉敷への出張を認めて始業時刻を午前8時30分とし、平成25年10月24日は経費精算一覧等から三保電機との打ち合わせを認めて終業時刻を午後8時とし、平成26年1月17日は終電時刻等から終業時刻を午後11時と認定した。その結果、発症前6か月間の月平均時間外労働時間は81時間34分に達し、認定基準の「1か月当たりおおむね80時間」を超えた。加えて、10日を超える連続勤務が5回あったこと、発症前1か月間に勤務間インターバルが11時間未満の日が7回あったこと、発症9日前には18時間超の長時間労働があったこと等の負荷要因を認定し、飲酒・喫煙等のリスクファクターも著しいものではないとして、本件疾病の発症は業務に内在する危険が現実化したものと認め、業務起因性を肯定した。