AI概要
【事案の概要】 不知火海沿岸地域にかつて居住し、共通診断書検診により水俣病(慢性水俣病)に罹患していると診断された144名の患者又はその承継人である原告らが、被告チッソ株式会社に対しては不法行為に基づき、被告国及び被告熊本県に対しては各規制権限を行使して水俣病の発生・拡大を防止すべき義務を怠ったとして国家賠償法1条1項に基づき、患者1人につき450万円の損害賠償金等の連帯支払を求めた事案である(いわゆるノーモア・ミナマタ第2次訴訟大阪訴訟)。 【争点】 (1) 被告国県の規制権限不行使の違法性(水質二法、県漁業調整規則、旧食品衛生法4条・27条に基づく各規制権限の不行使が国賠法上違法か)、(2) 水俣病の病像・診断基準(四肢末梢優位の感覚障害等を水俣病の診断基準とすることの疫学的正当性、昭和52年判断条件によらない診断の可否)、(3) 共通診断書の信用性、(4) メチル水銀曝露の程度の判断基準、(5) 個別患者の罹患の有無、(6) 除斥期間・消滅時効の適用、(7) 不起訴合意の抗弁、(8) 損害額。 【判旨】 一部認容。裁判所は、被告国が昭和35年1月以降に水質二法に基づく規制権限を行使しなかったこと、被告県が同月以降に県漁業調整規則32条に基づく規制権限を行使しなかったことについて、それぞれ国賠法1条1項の適用上違法と判断した。昭和34年11月末時点で、水俣病の公式確認から約3年半が経過し深刻な被害が継続していたこと、原因物質がチッソ水俣工場由来の有機水銀であることを高度の蓋然性をもって認識し得たこと等を考慮し、規制権限の不行使は著しく合理性を欠くとした。他方、旧食品衛生法4条に基づく告示や同法27条に基づく健康調査の不実施については違法性を否定した。 水俣病の診断基準については、昭和52年判断条件が要求する複数症候の組合せによらず、メチル水銀曝露の事実が認められ、四肢末梢優位の感覚障害又は全身性感覚障害のいずれかが認められることを前提に、他の症候の有無、発症経過、他原因の可能性等を総合的に考慮して判断するのが相当とした。除斥期間については、慢性水俣病の損害発生時点は共通診断書検診時であるとし、被告らの時効・除斥期間の主張をいずれも排斥した。 以上を踏まえ、原告144名のうち138名について被告ら全員の連帯責任を認め、曝露時期が昭和35年1月より前の6名については被告チッソのみの責任を認めた。慰謝料は患者1人につき250万円、弁護士費用25万円の合計275万円と認定した。