AI概要
【事案の概要】 本件は、被告(ソニーグループ株式会社)の元従業員である原告が、在職中に共同発明者の一人として行った職務発明について、特許法(平成16年改正前)35条3項及び4項に基づき、相当の対価の一部請求として5億円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 原告は昭和54年から平成25年まで被告に勤務し、在籍中に同僚と共同で、デジタル機器における著作権保護のためのコピープロテクション技術に関する発明(本件発明)を行った。この発明に基づき、被告は日本及び米国で合計18件の特許(本件各特許)を取得した。本件各特許は、DVDビデオディスク等のデジタル記録媒体において、デジタル信号をアナログ変換した際の不法コピーを防止する技術に関するものであり、DVD規格の標準技術として広く採用された。 【争点】 主な争点は、(1)本件各発明の実施の有無(被告製品が本件各特許の構成要件を充足するか)、(2)相当の対価の額(被告が受けるべき利益の額、被告の貢献度、共同発明者間の原告の貢献度)である。原告は、DVDプレーヤーやDVDディスク等の被告製品が採用する各種規格(DVDビデオ規格、DVD-ROM規格、ARIB規格等)を基に製品構成を特定し、本件各発明の構成要件を充足すると主張した。 【判旨】 裁判所は、まず本件各発明の実施の有無について詳細に検討した。DVD-ROM規格については映像信号の記録を必須の要件とするものではないとして構成要件の充足を否定し、DVDビデオ規格における記録装置・方法についてもマスタリング装置は既存のディスクに記録するものではないとして否定した。一方、DVDビデオディスクについては、本件特許1-5、1-7及び2-3の合計3件(本件実施特許)の構成要件を充足すると認めた。 相当の対価の算定においては、被告はDVDビデオディスクを自己実施していないため、他社へのライセンス収入に基づく独占の利益を算定した。具体的には、被告単独ライセンス、フィリップス社とのジョイントライセンス、One-Redのライセンスプログラムの各収入を、ライセンス対象特許数で按分して本件実施特許3件分の利益を算出した。被告の使用者としての貢献度は、発明の製品化、標準規格への採用、ライセンス交渉努力等を考慮して95%と認定し、共同発明者間における原告の貢献度は50%と認定した。 以上の計算の結果、原告が受けるべき相当の対価の額は、被告が既に原告に支払済みの額を下回るものであったため、原告の請求権は消滅したと判断し、原告の請求をいずれも棄却した。