特許取消決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(株式会社ドクター中松創研)は、「高速ドローン等航空機」に関する発明について特許権(特許第6731604号)の設定登録を受けた。この発明は、垂直離着陸と高速水平飛行の両方が可能な新型ドローン等の航空機に関するもので、胴体の左右に複数の上昇下降用プロペラを前方後方に配置し、水平飛行時に揚力を得る複数の翼を設けた構造を特徴とする。特に、訂正後の請求項では、上昇下降用プロペラの回転軌跡を前方又は後方の複数の翼に内接させることで、翼をプロペラガードとして兼用する構成が加えられていた。 本件特許に対して特許異議の申立てがされ、特許庁は異議2021-70092号事件として審理を行った。原告は取消理由通知を受けて訂正請求をしたが、特許庁は令和5年1月24日、訂正を認めた上で本件特許を取り消す決定をした。取消決定の理由は、引用発明1(米国特許)に基づく新規性・進歩性の欠如、及び引用発明2(特表公報)に引用文献3・4記載の技術事項を組み合わせることによる進歩性の欠如であった。原告はこの取消決定の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。 【争点】 主な争点は、(1)引用発明2を主引用発明とする進歩性判断の誤り(相違点の認定誤り、引用文献3・4記載の技術事項の認定誤り、組合せの動機付けの欠如)、(2)引用発明1を主引用発明とする新規性・進歩性判断の誤りである。特に、本件発明の「上昇下降用プロペラの回転軌跡を複数の翼に内接させることでプロペラガードとして兼用する」という構成の解釈と、引用文献との対比が中心的な争点となった。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。まず「内接」の意義について、プロペラの回転軌跡が翼と接触するには至らない限度で十分に近接していることを意味すると解釈し、原告が主張する「プロペラ軌跡が両翼に挟まれ、かつ両翼端部を結んだ線を出ないこと」という限定的解釈は、特許請求の範囲にそのような限定を加える訂正をしていない以上、採用できないとした。 取消事由1について、引用発明2との相違点の認定は、ロータと翼がほぼ同一平面上に位置していれば「内接」及び「プロペラガードとして兼用」の要件を満たすとして、本件決定の認定に誤りはないとした。引用文献3については、前翼及び後翼の間に配置されたロータの先端破損に対する保護が明記されており、翼がプロペラガードとして機能する技術事項の開示があると認定した。引用文献4についても、フラップが上昇プロペラへのアクセスを防止する保護シュラウドとして使用される旨の記載があり、プロペラガードの技術事項が開示されていると認めた。組合せの動機付けについても、引用発明2と引用文献3・4は上昇下降用プロペラを複数の翼の間に配置する航空機という点で共通し、プロペラの保護は一般的課題であるとして、動機付けは十分にあるとした。以上から、本件発明は引用発明2に引用文献3・4記載の技術事項を組み合わせることにより当業者が容易に発明できたものであり、特許法29条2項に違反するとして、取消決定に違法はないと結論づけた。