特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和5ネ10032
- 事件名
- 特許権侵害差止等請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2023年10月5日
- 裁判官
- 清水響、浅井憲、勝又来未子
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、「特定のユーザの体臭成分を分析する方法」に関する特許権を有する原告(控訴人)が、被告(被控訴人)の提供するサービスにおいて使用される方法が当該特許発明の技術的範囲に属し、特許権を侵害すると主張して、被告に対し、特許法100条1項に基づく方法の使用差止め、同条2項に基づく衣服の廃棄、民法709条に基づく損害賠償金400万円及び遅延損害金の支払、並びに特許法106条に基づく謝罪文の掲載を求めた事案の控訴審である。 原告の特許発明は、ユーザの肌に直接触れる試料(Tシャツ等)をパッケージに密封して提供し、所定期間使用後に密封状態で回収し、付着した体臭成分を分析するという方法に関するものであった。原審(東京地裁)は原告の請求をいずれも棄却し、原告が控訴した。控訴審では、原審の争点に加え、原告が訂正審判を請求したことに伴う訂正の再抗弁の成否(争点5)が新たな争点として追加された。 【争点】 主な争点は、①被告の方法が本件特許発明の技術的範囲に属するか(構成要件充足性)、②本件特許が進歩性欠如により無効であるか、③控訴審で追加された訂正の再抗弁により無効理由が解消されるか、④構成要件F(体臭の発生が集中している部位を特定した上で当該部位に対応する試料部分の体臭成分を分析する工程)の充足性であった。特に、先行文献である乙7論文(女性被験者のTシャツに付着した体臭成分の性的魅力度を評価する実験に関する論文)を主引用発明とする進歩性の判断が中心的な争点となった。 【判旨】 知財高裁は、原審の判断を維持し、控訴を棄却した。 第一に、訂正の再抗弁について、原告は訂正により「自身の体臭を気にする特定のユーザ」との限定を加えたことで乙7発明との間に新たな相違点が生じると主張したが、裁判所は、本件訂正発明も乙7発明もいずれも個人の体臭成分を分析する方法であり、分析対象者が「自身の体臭を気にする」か否かは方法自体の内容に相違をもたらさないとして、相違点とは認めなかった。仮に相違点があると考えた場合でも、乙7発明の方法を「自身の体臭を気にする」個人に適用することは当業者が適宜選択できたものであり、容易想到性は否定されないと判断した。 第二に、原告は両発明の課題や技術分野が異なると主張したが、裁判所は、両発明とも試料に被験者の体臭成分以外の臭い成分が付着しないようにするという共通の課題を有しており、技術分野も共通であるとしてこの主張を退けた。 第三に、構成要件Fについて、裁判所は、回収された試料についてあらかじめ分析を行い体臭の発生が集中している身体の部位を特定した上で当該部位に対応する試料部分の体臭成分を分析することを規定するものと解釈し、被告の方法はそのような部位特定のための事前分析を行っていないとして、構成要件Fの充足を否定した。